休校中の親子の不安にどう対応する? ベネッセ教育総合研究所が子どもの生活・学びの困りごとに応えるシリーズ(7)

新型コロナウイルス感染症の影響による“非日常”が続き、子どもの生活リズムが乱れたり、学習が進まなかったり…。不安を覚えることが少なくないと思います。そこで、ベネッセ教育総合研究所/チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)の木村治生主席研究員が、主に小・中学生の子どもを持つ保護者のかたに向けて10回にわたって子どもたちの生活と学びについてお話しします。

●休校中は親も子も不安があるのは当たり前

地域によって休校や分散登校が続き、自宅で子どもをどう過ごさせるべきか、悩んでいるご家庭が少なくないと思います。でも今は、子どもも大人も初めて経験する事態。学習が遅れてしまう、生活が乱れてはいけない、などと不安は募るでしょうが、いつもできていたことができないわけですから、不安があって当然です。だから不安を否定したり、過剰に反応したりせずに、「多くの子どもや保護者が同じように不安なんだ」と受け止めるのがいいと思います。

●「参考になる」と思う情報を選ぶ

今は、参考になると思う情報だけを選ぶことも大切です。何に対して強く不安を感じるかは、子どもの状況や年齢、学校再開の状況、保護者のかたの仕事や経済状況などによって異なります。報道では社会的な課題が広く取り上げられますが、不安やイライラが増すような情報であれば、あえて触れなくても構いません。通常であれば不安感は、情報を遮断したときのほうが増します。しかし、とくに不安が多い今の状況においては、自分には必要ない情報を見ないでおくことが、メンタルヘルスにとって重要だと思います。

●この経験が生きることがきっとある

また、今は、「生活も学習も完ぺきにこなす必要はない」と、ゆったりと構えることも大切でしょう。教育格差の話を聞くと、「他の子と差ができてしまうのでは」と心配になるかもしれません。しかし、完ぺきを求めようとすると、子どもも保護者のかたもますますしんどくなります。
休校中も、子どもたちはさまざまに成長しています。保護者のすがたから学ぶことも多いでしょうし、報道から社会のしくみを学んだり、社会貢献の必要性を感じたりしているかもしれません。例えば、医療がひっ迫している状況を見て「将来は医療関係者を目指す!」という気持ちが生まれる子どももきっといるでしょう。
将来この経験が生きることがきっとあります。今の状況だからこそ得られる貴重な経験もあると考えて、通常のときと同じ完ぺきさを求めないことが大事だと思います。

子どもを思う保護者の気持ちは、子どもにしっかりと伝わります。だからこそ、不安にかきたてられて情報に右往左往し、あれもこれもと完ぺきを求めないことが大切です。また、家庭では解決できないことがあれば、ぜひ学校や専門機関に相談してください。孤立しないように、遠慮なく他を頼って、今を乗り切っていきましょう。

上記記事はベネッセ教育総合研究所が運営するチャイルド・リサーチ・ネット(CRN)に掲載した動画をもとに作成したものです。
チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)は「子どもは未来である」という理念を掲げ学際的、国際的な活動を推進する、インターネット上の「子ども学」研究所です。ベネッセ教育総合研究所の支援のもと運営されています。

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プロフィール


木村治生

https://researchmap.jp/hrkmr/

これまで、子ども・保護者・教員を対象にした調査に携わり、子どもの生活や学びとそれにかかわる周囲の大人の意識・行動に関する研究を行う。
上智大学大学院(教育学修士)、東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~23年)。

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