「情報の整理」と「知識のネットワーク化」で、読解力を高めよう!

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国語だけでなく、すべての教科を学ぶうえでの土台となる「読解力」。
どうすれば子どもの「読解力」は高められるのでしょうか。
『生きる力を身につける 14歳からの読解力教室(笠間書院)』の著者で、「読む」ことを長年研究している東京学芸大学 准教授の犬塚美輪先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

【保護者のかたのお悩み】
小学校高学年の子どものことです。算数の文章問題が苦手で、問題文を読んでも何が問われているかわからないと言います。どうすれば算数をはじめ、教科に役立つ「読解力」を鍛えられますか? 本をたくさん読めばよいですか?

教科ごとに、必要な読解力は違う

「本を読むこと」と、「読解力」は関係があると思いますが、たとえば本を100冊読めば、すぐに算数の文章問題が解けるというわけではありません。
また、「算数」で言われている読解力と、「国語」で言われている読解力では、その性質も違います。

「たかしくんは八百屋さんに行きました。200円を出してジャガイモを3つ買いました。おつりの20円をお店の人にもらって、家に帰りました。」という文章があるとします。

「国語」であれば、「ジャガイモがなかったんだね。これから何を作るのかな。たかしくんの家は肉じゃがかな」などと、その文章で書かれていない細部を想像することも大事になってきますし、「八百屋さんはこの近所にはないけれど、どこに行けばあるかな」と考えていくのは「社会」の分野かもしれません。「算数」ですと、「200円、3つ、20円」という数字に注目して、その関係を考えていくことになるでしょう。

このように、教科や課題によって情報の整理の仕方に違いがあります
そのため、教科ごとに「算数の問題で、聞いているのは『数の関係』だろう。細かいところはいったん置いておいて、今はその関係に注目して整理しよう」とか、「図にしたほうがわかりやすいかもしれない」などと、読み解くためのアプローチ方法を考えていく必要があります。これも「読む」ことの一種ですが、「情報を整理する」といったほうがイメージしやすいかもしれません。

勉強ができる子は、教科書をきちんと読めている

高学年の社会の教科書にもなると、一つひとつの単語も難しくなり、それらの意味を把握しながら、文章として何が書いてあるのかを理解していく必要が出てきます。さらに地の文以外にも写真があって、グラフがあって、写真の下には補足する文章があって……と盛りだくさんなので、読み解いていくのも一苦労です。

勉強ができる子は、教科書をきちんと読めています。「教科書を正確に読む」「何が書いてあったかを整理できる」「グラフや図の意味を言語化できる」……こういったことができる子は、結果として勉強ができるでしょう。また、わからない問題にぶつかった時でも教科書が読めるので、読んで、もう一回自分で考えることができます。

反対に、勉強が苦手な子は、教科書は読まずに、穴埋めの問題集ばかりを繰り返しやっているというケースがあります。「読む」ことは、頭の中に世界を再構成することであり、「勉強する」時には欠かせないものです。

読解力を高めるための、2つのボキャブラリー

教科書を理解するためには、どの教科でも2つのボキャブラリーが重要になります。
1つ目は「キーワードのボキャブラリー」です。その話題に対して、どれくらい関連する言葉を知っているかということです。算数でいえば「垂直」とか「平行」といった専門用語がキーワードになりますね。用語をたくさん知っていればいるほど、読んで理解する時の手助けになるものです。

2つ目は「学習用ボキャブラリー」です。日常生活では使われにくいけれど、学習場面ではよく使われる言葉を指します。たとえとしては、「およそ」「適切な」「関する」といった言葉が挙げられます。こうした言葉は、「読み手もきっとわかるだろう」という推測のもとに使われがちですが、実際にはよく理解できていないことがあります。読み手が正確に理解していないと、学習時に困ってしまう言葉ですので、しっかりと身に付けていく必要があります。

読む時に単語がわからないと全体の理解を下げてしまいますから、この2つのボキャブラリーは、どちらも身に付けていきたいものです。

つながりのある知識をつくることが大事

覚えた知識は、何かとつながっていれば、連想することができますが、つながりがなければ、なかなか頭から取り出しづらいものです。関連付けたり、言葉と言葉をつなぎあわせて、1つの世界にしたりすることで、知識を「ネットワーク化」し、記憶にとどめやすくしていきます。

これは勉強も同じで「まとまった世界にする=つながりのある知識をたくさんつくる」ということが大切です。
テスト対策として、「問題集をたくさんやる」「塾でやった解き方を暗記する」など方法はいろいろとあると思いますが、「教科書を正確に読む」「教科に合った方法で情報を整理する」「情報をつなげる」を意識して勉強することで、大人になっても役立つ読解力が身に付けられると思います。

まとめ & 実践 TIPS

教科ごとに求められる読解力が違うので、その教科に合った読み解き方や情報を整理する力を高めていく必要があることがわかりました。また、文章を読んで得た知識(情報)も、ネットワーク化することで、頭の中から取り出しやすくなるようです。

プロフィール


犬塚美輪

東京学芸大学准教授。
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。
主な著書に『論理的読み書きの理論と実践 知識基盤社会を生きる力の育成に向けて』(北大路書房・共著)、『生きる力を身につける 14歳からの読解力教室』(笠間書院)などがある。

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