記述問題の解答や、作文、意見文など、文章を書くのが苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

記述問題の解答がうまくできません。作文や意見文など、文章を書くこと自体がそもそも苦手です。自分の意見をまとめて文章にするということができず、宿題も時間がかかってしまいます。

相談者:小5女子(大ざっぱ・よい子タイプ)のお母さま



【回答】

上手な文章をマネして「型」をマスターする。


■文章を上手に書くには

記述問題、作文、意見文は書くべき内容が違いますが、いずれにしても「型」をマスターすることで少しずつ上手に書けるようになります。文章を書くのが上手なお子さんは多くの場合、今までにたくさんの文章に触れたことで、使える表現や文章の構成の「型」をいくつも持っているのです。極端に言えば他の人の文章をまねしているだけですが、いくつものバリエーションを組み合わせて使うことでマンネリにならず、時にはオリジナリティーあふれる表現も加わり、読み応えのある文章に仕上げています。一方、文章が書けないお子さんは自分の中に決まった「型」がない、あるいはあっても少ないので、手が動かなかったり同じような文章しか書けなかったりするのです。文章を上手に書けるようになるには、まずは書き方の「型」をマスターするのが一番でしょう。


■作文と記述問題の違い

作文の構成(型)は、「起・承・転・結」あるいは「起・承・結」(または「はじめ・なか・おわり」)が一般的です。たとえば読書感想文では、「はじめ」……その本の簡単なあらすじ、「なか」……おもしろかった部分とその理由、「おわり」……その本を読んで得たもの、といったところでしょう。

一方、記述問題の答案の「型」は、「理由+相手+キーワード+文末」というのが一般的です。問題によって、「気持ちを問う問題」「理由を問う問題」「意味を問う問題」などがあります。たとえば、「気持ちを問う問題」の場合、文末は「~気持ち」、キーワードは登場人物の気持ち(たとえば「悲しい」)を心情表現などから推測します。さらに、誰に対して悲しいのか、なぜ悲しいのかなど部品を集めていきます。そしてそれらを組み立て、「母に叱られて悲しい気持ち」のように完成させます。このように作文と記述問題の「型」はまったく違いますので、それぞれの「型」を知らなければ書きにくいのは当然でしょう。


■作文と小論文を区別する

作文は、経験したことやその感想を中心に書いた文章です。それに対して意見文(あるいは小論文)は、結論のある作文という言われ方をよくされます。結論に至るまでには論理的な根拠も必要だし、そもそも何について論じているのか話題を明確にする必要もあります。構成としては、問題提起・意見提示・展開・結論(あるいは問題提起・意見提示・結論)というのが一般的です。

これは作文でも意見文でも言えることですが、書き出しがなかなか難しいと悩むお子さんは少なくないでしょう。こんな場合も「型」を決めておき、たとえば作文であればセリフ「『早く起きなさい。すごくいい天気よ』というお母さんの声に起こされた(遠足の作文例)」で始めたり、あるいはエピソードで始めたりすると書きやすいと思います。一方、意見文の場合は、Yes、Noではっきり答えられるような問題提起にすると書きやすいでしょう。たとえば、「みんなで動物園に遠足に行く必要はあるのか?」などと問題を提起し、これに対して自分なりの意見とその理由を述べ、最後に結論を述べていくとそれなりの意見文(小論文)になります。このように、意見文の構成は記述問題の答案とも作文とも違います。この違いを知らないと、意見文を書いたと思っても「これじゃ作文だ」などと言われてしまいかねないのです。


■「型」をマスターするには

それぞれの文章でよく使われる「型」を簡単に説明してきましたが、一番大切なことは、それらの型に沿って書かれたすぐれた文章を参考にして、実際に自分で文章を書いてみることです。たとえば、感想文が苦手なお子さんであれば、「型」に沿って書かれた上手な感想文をまずは読んでみましょう。そして、今度はその感想文の書かれているとおりに、自分が読んだ本の感想文を書いてみるのです。この時大切なことは、表現や構成をできるだけまねてみることでしょう。もちろんそっくりそのまま書いてしまっては、違う本の感想文ですから、妙な文章になってしまいます。そのあたりは読んだ本に沿って変えていく必要がありますし、それがそのお子さんのオリジナルになるのです。なお、当然ですが、読む本は参考にする感想文が書かれた本とは違ったものにしてください。

このようにして仕上げた感想文は、人のものをコピーして貼り付けたようで意味がないように思えるかもしれません。しかし、何回かこのような学びを行うことで「型」ができてきて、まがりなりにも書けるようになってくると思います。そして自信が付いてきたら、「型」を少しずつ崩して、自分なりの新しい「型」をつくってみることです。そうした試行錯誤が、本当の意味でものを書くことの上達につながっていくことでしょう。

苦手であれば、まずは上手な人のマネをしてみる。これはあらゆることに通じる真理だと考えます。書くことも、苦手であれば遠慮なく他の人の書き方を参考にして「型」を習得してください。それが上達への最短の道だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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