子どもの心を動かさないと、子どもは勉強する気にならない!?ではどうすれば心は動くの?ぺたほめの藤田敦子さんに聞きました
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息子2人の難関中学受験も、難関大学の医学部受験も成功させた子育てアドバイザーの藤田敦子さん。シングルマザーとしてフルタイムで働きながら受験に向き合った経験をつづった著書『母親が変わればうまくいく 第一志望校に合格させた母親がやっている子育て39』(講談社)が話題になっている藤田さんに、小学校高学年の子どもを持つ親たちに向けたアドバイスを伺いました。
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中学受験するにしてもしないにしても、がんばれる子に育てたい
—藤田さんの息子さんは2人とも中学受験をされたそうですね。小学校高学年になると勉強も難しくなりますが、サポートする側のお母さんはどのような心構えでいるとよいでしょうか。
藤田:うちは、息子2人とも京都で最難関といわれる中高一貫校に受験して入りました。シングルマザーで働きながら、一人で子どもたちの受験を乗り切りました。中学1年生のころから高校生の姿を見て学ぶことが多く、息子たちもリーダーをやったり応援団長をやったり、結果的によい学校生活を送れたと思っています。私は中学受験賛成派でみなさんにもおすすめしているのですが、もちろんご家庭の方針で受験されないかたや、家から通える中学がないということもあるので、そこは人それぞれだと思います。
でも、中学受験をしないから勉強しなくていい、ということではないですよね。まず親子で「将来どこの大学に行きたいの?」「大きくなったらどんな仕事をしたいの?」と話しておくことが大事だと思います。中学受験でも第一志望に合格できるのは3割と言われていますし、大学も職業も、なかなか希望通りに叶えられる人はいません。親としては、我が子には行きたい大学に入ること、なりたい職業につくことは叶えてあげたいですよね。たとえば、国公立の大学に行きたいというのであれば、中学受験した子もしていない子も、大学受験で戦うことになります。ということは、中学受験をしなくても、中学受験する人と同じぐらいのレベルの勉強をしておいたほうがいいと思うのです。
—確かに、将来的に同じ土俵で戦う可能性がありますね。とはいえ、無理にやらせて勉強嫌いになるのも困ります。
藤田:私自身が中学受験を経験して、勉強嫌いになったタイプなのでその気持ちはよくわかります。中高で赤点ばかりで、勉強しなさいって言われ続けたのが苦痛で、がんばれない子になってしまいました。だからこそ、息子たちは勉強が嫌いにならないように、がんばったらできる子に育てたいと思っていたのです。
中学受験するにしてもしないにしても、がんばれる子には育ててほしいんです。がんばったらできるよっていう子どもに育てたら、夢はいろいろ叶っていくと思います。
子どもの得意なことを見つけてほめる
—低学年でつまずき、既に勉強嫌いになっている子にはどんな声かけをすればいいのでしょうか。
藤田:子どもの心を動かさないと勉強するようにはならないので、まずは子どもの心を動かす声かけからですね。子どもの将来の夢の話をしながら、「それならいまはこういう勉強をしたほうがいいよね」「嫌かもしれないけどがんばって一緒にやってみようか」とか。前回のお話で低学年にはママ塾でと言いましたが、高学年でも勉強が苦手なようでしたら親御さんが一緒に寄り添ってあげて、「わかる、わかる。お母さんもあんまり勉強好きじゃなかったのよ」とか、「お母さんも一緒にやってみようかな」などと言ってみてはどうでしょうか。うちの息子も漢字がずっと嫌いだったんですけど、一緒に勉強したり、漢字検定を受けたりするようになったら好きになっていきました。
世間の風潮として、平均的になんでもできるようにさせたがりますよね。できることはそのままで、できないことを持ちあげようとするけど、そうではなく、できることを見つけてそこをたくさんほめてあげるといいと思います。以前、お子さんが何の役にも立たない工作ばかりしていて困るというお母さんがいたのですが、そんなことはありません。うちの息子も工作が好きだったのですが、そこを否定することなく続けさせていたら、コツコツ続ける力や考える力がつきました。
工作でも体育でも、得意なことを見つけて、がんばっていることをほめるんです。それによって他のこともがんばれる子になるはずです。
先の世界を見せ、勉強の必要性を伝える
—進学したい学校や将来の夢など、目標がまだ持てない子もいると思います。
藤田:先の世界が見えない子どもに、中学校に行くために受験勉強してるんでしょと言っても響きません。子どもは中学生にも高校生にもなったことがないから、見たことがない景色はなかなかイメージしにくいし、がんばれません。でも大人は先の世界がわかっているので、「どんな職業になりたいの?」と聞いて、そのために必要な勉強は何か話したり、世の中にはいろんな仕事があるということを教えたり、さまざまな選択肢を見せることはできます。そして先の世界を子どものレベルでわかるように説明してあげましょう。いまはコロナの影響でなかなか学園祭などを見に行くのが難しいかもしれませんが、オンラインで学校見学をやっているところもあるので、そういうのを見せてあげるのもいいかもしれないですね。
最終的にはできるだけ偏差値の高いところに行かせたいという親御さんもいますが、私はそういう考え方には反対です。学校選びは偏差値を基準にするのではなく、なぜ我が子にはその学校が合うのかという視点で選んであげてほしいと思います。それは中学校でも高校でも大学でも同じことです。親御さんと子どもで思うことが一致しないこともあるかもしれませんが、「お母さんとお父さんはこう思うんだけど」と伝えてほしいと思います。
—子どもに合った学校の提案や、夢を叶えるために勉強が必要だと伝えるのも親の役目ということですね。
藤田:医学部に入った次男も子どものころは漫才師になりたいといっていました。だから私は、「漫才師ってテレビに出ていっぱい喋らないといけないよね。ということは、いっぱい知識がないと話せないよね。いまテレビに出てる人たちもみんないっぱい勉強してがんばってるんだよ」と言いました。こじつけみたいな言い方かもしれないけど、子どもの夢をつぶさないように、でもどの選択肢を選ぶにしてもけっきょくは勉強しないとそのゴールにはたどりつけないよと教えてあげるのです。
勉強、勉強って言っているように思えるかもしれないけど、けっきょくしないといけないことですし、どうせやるなら楽しくしたほうがいいと思うんですよ。うちの子は、大学受験のときも、「勉強がすごく面白い」って言っていて。こっちからしたら、医学部の受験勉強のどこが面白いの? って感じですけど(笑)。勉強が楽しいと思えるように育ってよかったなって思います。
—ほめる子育ての成果ですね。
藤田:あと、お母さんはいつでも子どもの味方になってあげることも大切です。息子が6年生のとき学校の水泳大会で選手に選ばれたのですが、塾の先生は水泳より勉強をするように言いました。でも、私は「息子の人生には水泳大会のほうが大切です」と言って参加させました。息子が6年生の運動会で応援団長をやりたいと言ったときも、夏期講習を休んで応援団の練習に行かせました。子どもがやりたいということはやらせてあげたいし、受験のためにいろんなことを犠牲にしないように、味方になってあげました。子どもの自由を奪わなかったことが、逆に勉強をがんばれることにつながったと思います。ちなみに、我が家はゲームもテレビもOKにしていました。3時間の中で塾と学校の宿題が終われば、残りはゲームできるという獲得制にしたら、勉強を早く終わらせるようになりましたね。
学校や塾でのストレスがリセットされる「帰りたい家」に
—最後に小学生のお子さんをもつ親御さんへアドバイスをお願いします。
藤田:子どもは学校や塾でたくさんストレスを抱えて家に帰ってきます。ですから、家はそれがリセットされる「帰りたい家」にしてあげることが大切です。これは学年関係なくですが、お母さんはいつも、子どもに共感して、いっぱいほめて、がんばりを認めて、味方になってあげてください。
『母親が変わればうまくいく 第一志望校に合格させた母親がやっている子育て39』が発売中
「勉強しなさいと言って子どもをつぶす親がけっこう多いと思うのですが、子どもの目線に下がって、いま子どもがやりたいことを100%認めて、自己肯定感の高い子に育ててあげてください。自信を持っている子のほうが、将来どの道を進むにしてもいいと思います。まずはお母さんから変わっていきましょう」
『母親が変わればうまくいく 第一志望校に合格させた母親がやっている子育て39』(講談社/¥1,500+税)
まとめ & 実践 TIPS
子どもの心を動かすために親ができることは、将来の景色を見せ、たくさんほめる、帰りたい家を作ること。藤田さんのお話を聞いて、まずは自分が変わろうと思ったかたも多いのではないでしょうか。
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取材&文/井上加織
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