漢字の書き順は「共通するパーツ」や「例外的な書き順」を正しく覚えるのがコツ
大人でも意外とまちがえて覚えていることが多い漢字の書き順。書き順をまちがえても最終的に正しく書けていれば、さほど問題にはなりませんが、正しい書き順を覚えることの利点もいろいろとあります。進研ゼミ「漢字サプリ」の開発に携わる鈴木優伯に聞きました。
どうして正しい書き順を覚える必要があるの?
小学校ではひらがなの書き順は丁寧に指導しますが、漢字に関しては学校や先生による差が大きいようです。小学校低学年では新出漢字について、先生と一緒に空中に指で文字を書く「空書き」の指導をするケースもありますが、学年が進むにつれてお子さま自身の学習に任される場合もあるようです。
おうちの人の中には、「少しくらい書き順がまちがっていてもよいのでは」と思うかたもいるかもしれません。その考え方にも一理あると思います。確かに、最終的に正しい字形となっていれば意味を伝えるうえで支障はありませんし、テストの採点では書き順までわかりませんから減点されることもありません。2016年2月、文部科学省の外局である文化庁は、漢字の指導に関して、「『とめ』『はね』などに細かい違いがあっても誤りではなく、その漢字の骨組みが同じであれば、誤っているとはみなされない」といった指針を出しています。細部に必要以上に目を向けずに指導するようにというメッセージは、書き順にも通じるかもしれません。
しかし、書き順を正しく覚えることに利点があるのも確かです。1つは、漢字を覚えやすくなることです。というのも、漢字はさまざまなパーツの組み合わせで構成されており、以前に習った漢字のパーツを別の漢字でも使うというくり返しで覚えていきます。書き順を覚えていないと、新しい漢字を習うときに同じパーツを異なるパーツととらえてしまい、記憶しづらくなることがあります。また、字を上手に書くための要素はいろいろとありますが、正しい書き順で書くと安定した字が書きやすいという側面もあります。
書き順を覚えるためには、おうちの人が注意するだけでは直りません。くり返し正しく書く練習を行い、体で覚えるのが一番です。ただ、漢字練習だけやらされるとお子さまは嫌になってしまいますから、クイズ形式で正しい書き順を答えさせるなど、楽しく学習したいですね。
まちがえやすい書き順のパターンは?
「漢字サプリ」の書き順の誤答パターンを分析すると、まちがえやすい傾向があることがわかります。
●イレギュラーな書き順はまちがえやすい
漢字は横棒から書くのが一般的ですが、「上」「右」などは縦棒から書くのが正解です。こうした例外的な書き順をまちがえて覚えてしまうケースが少なくありません。「入」も「ノ」を先に書くのがイレギュラーなため誤答が多く見られます。例外的な書き順は明確に例外であると捉えて覚えた方がよいでしょう。
●同じパーツを含む漢字を全てまちがえる
例えば、「田」の三画目は、縦棒が正しいのですが、「日」を書いてから縦棒を書き加えるまちがいが多く見られます。そのように最初に誤って覚えると、「町」「男」など「田」のパーツを含む他の漢字の書き順もまちがえてしまいます。新しい漢字を習う際の違いの元となる可能性もあるので、最初に正しく覚えるのが効果的です。
書き順の学習をどうサポートする?
おうちの人ができるサポートとしては、まずお子さまに漢字を共通するパーツで捉える考え方を教えた上で、上記のような「まちがえやすいパターン」があることを伝えてみてはいかがでしょうか。お子さま自身が例外的な書き順があることを意識できると、まちがいはぐっと減るでしょう。
書き順は、漢字練習の際にお子さまの横について教えられるとよいのですが、そこまでの時間はなかなかとれないと思います。書き順の指導に時間を割くのなら、例えば、お子さまの興味のある分野の語彙を広げるなどコミュニケーションを踏まえたサポートを充実させたほうがよい面もあります。「漢字サプリ」には、書き順と字形のまちがいを自動で指摘する機能があるので、こうしたデジタルの学習ソフトをうまく活用することも効果的な指導の一つとして視野に入れていただければと思います。