親のITリテラシーが低くて不安?実はシンプルな、子どものデジタル競争力の高め方

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AI(人工知能)が登場し、あらゆるもののデジタル化が進む昨今、子どもたちを取り巻く環境は大きく変わってきています。これからの時代のデジタル教育とその時代を生き抜くために必要な力とは—。
ITエンジニアで企業のシステム開発や技術コンサルなどを行い、子ども向けのプログラミング講座などの経験も豊富な『シン・デジタル教育 10年後、わが子がAIに勝つために必要なこと』(かんき出版)の著者、松林弘治さんにお話を伺いました。

この記事のポイント

日本のデジタル教育が遅れている背景

 現代社会において、あらゆる問題解決にITは不可欠です。そのため、そのしくみを理解している人とそうでない人との間には、これから明確な差が出てくるでしょう。

 今どきの子どもたちは、生まれたときから身のまわりにあるタブレットやIT機器に触っている「デジタル・ネイティブ」世代です。
 YouTubeの関連動画を探したり、動画を好きなところで止めたり、誰にも教わっていないのに、触り倒し、自由自在に操ることができます。
 一方、パソコンを使って学習したり、創作したりすることに関しては、日本の子どもたちは、OECD※加盟国の中で最下位です。(※日米含む38か国の先進国が加盟する国際機構)

 日本のデジタル教育が遅れている背景には、学校教育の現場でなかなか自由にパソコンを使える機会が少ない、先生たちもIT機器を活用することに慣れていないことがあるのではないかと思います。
 また、授業のスタイルが、「一斉教授型」が主流な場合が多いこともあるでしょう。
 先生が言ったことをノートに書き写して、指示された問題を解くという授業の中では、子どもたちが自由にできる時間が少なく、教育現場にIT機器が入った時に、何が起きるか、どんな風に活用できるかを十分に検討できていないようにも思います。

コロナ禍で問われる大人のITリテラシー

 コロナ禍で、多くの学校の授業がオンラインになりました。
 その時、大人(保護者・先生)のITリテラシーはどうだったでしょうか。
 例えば教育現場でもよく使われている「Google Classroom」。
 システム自体はよくできていますが、家庭側・先生側の使いこなしスキルによって、使い勝手が良くも悪くもなります
 学校の中での活用方法は、数年かかって試行錯誤が繰り返されるうちに、少しずつこなれて煮詰まっていくでしょう。
 一方、家庭側はどうでしょうか。
 おうちのかたは、子どもが使い方がわからないときに、その後学んで親子で使えるようになっているでしょうか
 もし自分が使い方をわからない場合は、親という立場であっても、自分が学生だった時にはなかった新しいもの、学んでいないことが今ここにあるのですから、子どもと一緒に学べばいいのです。親である自分が知らないことは恥ずかしいことではなく、誰にとっても新しいことなのですから。
 子どもが学校で学ぶのと同じように、大人も世の中に新しいことが出てきた時は、少しでもキャッチアップする、学んでいくという姿勢を持つことで、家庭でのITリテラシー、デジタル教育の質を高められると思います。

学校現場は、IT知識がある人をどんどん活用すべき

 日本において、オンライン授業がなかなか普及しない、定着しないのは、学校の授業スタイルの主流が「一斉教授型」であり、活用できる場面が限定的なことも一つの要因だと思います。
 また、授業中にノートパソコンを広げつつ、30~40人いる生徒たちの状況を把握するのは大変なことですし、パソコンの電源が入らないなど予期せぬ事態が起こることもあり、なかなか対応しきれません。
 加えて昨今、先生の教務が爆発的に増えてしまい、新しいことを学ぶ時間がとりにくいという現状もあると思います。

 個人的な希望としては、外部の、必ずしも教員免許を持っていなくていいので、授業を補佐できるITリテラシーの高いサポーター的な人を学校がどんどん活用しやすくなる、そんな仕組みや制度を用意するべきだと思います。そうすることで、先生たちの不安も解消できますし、実際ITスキルがある人に授業を手伝ってもらうことで、どんな風にコンピュータを活用しながら授業をつくっていくかということも考えられるようになると思います。
 また、ITリテラシーがあるエンジニアと呼ばれる人たちが、日常的に仕事で使っている思考法に「コンピュテーショナル・シンキング」があります。

コンピュテーショナル・シンキングとは

  •  「コンピュテーショナル・シンキング」とは、日本ではあまりなじみがない言葉ですが、プログラミング的思考とほぼ同じ意味合いで、「コンピュータを活用するうえでもっておくべき思考法」のことです。物事の理屈=理論を考え、コンピュータの得意なことを知り、問題を解決するための計算や処理の手順を組み立てることで、日常生活や仕事でコンピュータの力を最大限に活用します。
  •  実際コンピュータがなければ、今の世の中、生活できませんし、イギリスのように「コンピューティング」として、学校で必修化する国もあります。

親子でできる!
コンピュテーショナル・シンキング

 子ども一人ひとりの個性や興味がある分野は違うので、“これさえやっておけば”「コンピュテーショナル・シンキングの力がつく」というものはありませんが、ゲームでコンピュテーショナル・シンキングを鍛える方法もあります。Nintendo Switch用「ナビつき! つくってわかるはじめてゲームプログラミング」では、自分でゲームをプログラミングでき、「こう動かしたい時には、こういった指示を出す」ということが、あまりお勉強感なく、遊びの中で楽しめます。
 またゲームでなくても、親子のやりとりの中で、「コンピュテーショナル・シンキング」のエッセンスを足すことはできます。
 身近なところでは、コンビニの自動ドアであったり、銀行のATMであったり。何でもいいのですが、ITが使われているものをたくさん触って、これはどういう仕組みなのかと、親子で一緒に考えてみるとよいと思います。

 うちでも、子どもと買い物に行く時に、

 「何で『押しボタン』って、押してすぐに青にならないのかなぁ?」

 という話題が出たり、家でテレビを一緒に見る時に、

 「リモコンでテレビの電源を入れてから、画面が映るまで、テレビはなにをやっているのかなぁ?」

といった疑問が出たりしました。
 そんな時、話の中に考えるきっかけになる言葉を投げ入れて「こうかな、ああかな」と一緒に考えるのです。親も知らなければ、一緒にインターネットや本で調べてみるのです。
 また、子どもの性格や年齢にもよりますが、質問された時はすぐに答えは言わずに遠回しなヒントを与えたり、「調べ方」をアドバイスしたり。子どもが最終的に自分で「わかった!」という瞬間を見るのは、とても楽しいものです。

 「なんでこうなっているのだろう」ということを深堀りする。興味を持つ心さえあれば、どんなことでも学びのネタにできるのではないかと思います。ITリテラシーを高めるにはコンピュータで遊び、楽しみ、触り続けることに勝るものはありませんが、その前段階として、まず探究心や好奇心を育むことは、とても重要な要素だと考えます

まとめ & 実践 TIPS

子どものITリテラシーを高めたいと思いながらも、自分は詳しくない……と引け目を感じる保護者のかたも多いでしょう。見栄をはらずに、「時代が変わり新しいことなのだから」と、大人もどんどん学ぼうとする姿勢が大切です。コンピュテーショナル・シンキングも難しく考えすぎずに、会話の中に入れていきたいですね。

プロフィール

松林弘治

松林弘治

ITエンジニア、著述家、IT教育者。
韓国の鮮文大学グローバルソフトウェア学科客員教授、大前研一氏主宰の「ビジネス・ブレークスルー」の子ども向けプログラミング講座や東京都練馬区の公立小学校でプログラミングなどを教えてきた他、保護者や教員向けのITセミナーを多数行う。
近著に『シン・デジタル教育 10年後、わが子がAIに勝つために必要なこと』(かんき出版)がある。

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