マイペースで朝の身支度に時間がかかります[教えて!親野先生]

【質問】

 

超マイペースな子で毎朝困っています。特に身支度に時間がかかりすぎます。途中で手が止まるのはしょっちゅうです。幼稚園バスの時間に間に合わなくなりそうなときはイライラしてしまいます。着替えの途中で服を半分着たまま、いつの間にか絵本を読んでいたときはキレそうになりました。もっとてきぱきできるようにするにはどうしたらよいでしょうか? (花音 さん:年中女子)


マイペースで朝の身支度に時間がかかります[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

花音さん、拝読いたしました。

時間に追われる現代生活で、親ばかりでなく子どもたちも朝からハードな生活を強いられていますね。こういう場合、私は工夫することと手伝うことが大切だと思います。工夫としては次のようなことが考えられます。

◎夜寝る時刻を早めて、朝起きる時刻を早めます。
それによって、親も子も朝の生活にもう少し余裕を持つことができます。

◎アナログ時計の横に紙に描いた模擬時計を貼って時間の見える化をします。
模擬時計の針は、朝食を食べ終わる時刻と着替え終わる時刻を指すように描きます。模擬時計に目ざすべき時刻が描かれているので、本物の時計の針が進んで残り時間が減っていくのが目に見えてわかります。これで子どももペースを調整するようになります。

◎身支度にかかる時刻をストップウオッチで計って記録します。
新記録が出たら花丸をつけます。あるいは、目標タイムを決めておいてクリアしたらシールを貼るのも良いでしょう。

◎レベル方式でチャレンジさせます。
ホワイトボードに下のようなレベルを書いておき、現状のところにキャラクターのマグネットなどを貼ります。

年少レベル  ママに着替えさせてもらう
年中レベル  3分で1人で着替える
年長レベル  2分で!
1年生レベル 1分で!
2年生レベル 30秒で!

ただ、ここで気をつけてほしいのがレベルの設定を難しくしすぎないことです。現状で3分かかるならそれを今の年齢にしてください。その子の現状に応じてやる気が出るようにすることが大切です。

子どもは「レベル」とか「クリア」などの言葉が好きなので、はりきります。クリアしたら大いにほめてあげてください。下がってしまった場合は、叱るのではなく一緒に悔しがってください。

◎やる気の出る言葉がけを工夫します。
たとえば、「早回しでスタート」「2倍速で着替えよう」というだけで楽しみながらスピードアップできます。ときには、反対に「遅回し!」と言ってゆっくりモードでさせてみるのも楽しいです。
ストップウオッチを片手に「昨日のあなたと競争だよ。用意、ドン」と言って始めさせるのも良いですね。

◎口で言うのではなくカードで伝えるのも良い方法です。
あるお母さんは、「急ごう」「早送り」「あと1分」「たたもう」などと書いたカードを見せるようにしているそうです。口で言うとどうしてもイライラするけれど、カードならそういうこともないそうです。

◎音楽を使う手もあります。
「この音楽が流れたら○○を始める」とか「この音楽が終わるまでに○○を終わらせる」などと決めて実践している家庭はけっこうあります。タイマーでセットしておいても良いですね。

これらの例を参考に、ぜひ皆さんもいろいろ工夫してみてください。ちょっとした工夫でかなりよくなることもあります。
やってみてうまくいかないときは、改善したりほかの工夫に切り替えたりしてください。

さて、それでもうまくいかないときもあると思います。
または、「そもそも工夫と言ってもなかなか……」という場合もあることでしょう。
そういうときは、手伝ってあげれば良いのです。
「親が見ていればできるけれど、見ていないと遊んでしまう」という場合は、終わるまでずっと見ていてあげてください。
でも、「そんな時間はない」とか「見ていても時間がかかる」という場合は、どんどん手伝ってさっさと着替えさせてしまえばそれでオーケーです。
これが現実的でおススメな方法です。
実際こういう方法で乗り越えてきた親子は星の数ほどたくさんありますし、今現在もたくさんいます。

でも、そのとき2つのやり方があります。
叱りながらやるか楽しみながらやるかです。
そのとき、「自分でやらなきゃダメでしょ」「まったくあんたは……」「なんで自分でできないの」「いつになったらできるの」などという否定的な言い方で叱りながらやるのはやめましょう。
こういう言葉は無意味であるだけでなく弊害ばかりです。こういう言葉によってできるようになることはありませんし、言われるほうも言うほうも朝から嫌な気持ちになるだけです。
それを引きずったまま家を出るのはよくありません。気持ちが不安定なとき子どもは(おとなでもそうですが)注意が散漫になりますので、交通安全の面でも問題があります。気持ちがクサクサしていると授業にも集中できませんし、友達とトラブルを起こす可能性も高まります。

また、否定的な言葉を浴び続けることで、子どもは自分に自信が持てなくなります。「親にあまり好かれていないのかも……」という不安も感じるようになります。

そうではなく、どうせなら楽しくやってください。あるお母さんは口から出任せの歌を歌いながら楽しくやっていたそうですよ。

今から今からお出かけだー♪
お出かけ一体どこ行くのー♪
そーれは楽しい幼稚園♪
ママも行きたい幼稚園♪

そして、ちょっと自分でがんばれた日は大いにほめてあげてください。

さて、ここまで読んで、「それでは依頼心が強くなって自分でできなくなるのでは? 自立心が育たないのでは?」と感じる人も多いと思います。
でも、そんな心配は杞憂です。
なぜなら、こういう現実的な方法でしのいでいるうちにだんだんできるようになった子は星の数ほどたくさんいるからです。子どもの成長とはそういうものなのです。
手伝ってもらってできるようになり、できるようになれば依頼はしなくなる、当たり前のことです。

そもそも、今の状態でも件のことができないからと言って、その子は依頼心が強いとか自立心がないなどということにはなりません。ただ、物事をてきぱき処理したり素速く行動したりすることが苦手なだけです。
この2つはまったく別問題です。
その証拠に、今だって自分が好きなことややりたいことは親に頼ることなくどんどんやっているはずです。

てきぱきしていない子はたくさんいます。
私の経験ですと、てきぱきしていない子は反面おっとりした癒し系で、友達に優しくてみんなに好かれていることが多いようです。あるいは、事務的な処理能力が遅い分、ユニークな創造性を持っていたりもします。
ですから、苦手な部分には目をつむって、その子の良いところをたくさんほめて伸ばして自信を持たせてあげてください。そうしていれば、依頼心が強くなって自立できないということはありません。

まとめます。
親にできることは、方法を工夫したり、言葉のかけ方を工夫したり、楽しく手伝ったり、ほめたりすることです。
このようにしながら気長に待っていれば、そのうちできるようになります。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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