子どものEQ力(心の知能指数)が絵本の読み聞かせで伸びる理由と、効果的な絵本の読み方選び方

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心の知能指数、「EQ」をご存知ですか? 豊かな人生を歩むために必要な力で、感情知能非認知能力とも呼ばれ注目されています。

これからの社会を柔軟に生きるため、子どもにぜひ身に付けてほしいEQ力。毎日10分の絵本の読み聞かせで伸ばすことができるのだそう。子どもの成長に効果がある絵本の読み方は、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』(パイ インターナショナル)の著者、仲宗根敦子さんに伺いました。

この記事のポイント

EQ力とは:これからの子どもに必要な能力

・EQは、IQを生かす土台となる

—絵本の読み聞かせでEQ力を高められるそうですね。そもそも、EQとはどんなものか教えていただけますか?

「絵本未来創造機構」代表理事仲宗根敦子さん(以下仲宗根):『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』では脳神経外科医の篠浦伸禎先生に監修していただき、EQは心の知能指数と紹介しています。EQが高いとは、自分の気持ちを知ってコントロールができ、他者を理解し、より良いコミュニケーションがとれる心を持っていることです

(『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』より、ベネッセ教育情報サイトが作成)

—I QとEQは、ちがう能力でしょうか。

仲宗根:EQは非認知能力とも呼ばれ、目に見えない能力です。たとえばIQ(知能指数)が高くて学校の成績がとても良くても、「自分なんかダメだ」「自分より優れた人が上にはたくさんいる」と思い込んでいると、能力を発揮することができません

能力を発揮するためには、安定した精神状態他人と協調することができ、自分を評価していること、つまり高いEQが必要です。素晴らしい能力があっても、自分勝手で利己的では誰からも応援してもらえませんよね。IQを生かすためにも、EQが一番土台となる能力だと思っています。

EQ力を高める絵本の読み方:子どもの興味を引き出し、自己肯定感を高める

・絵本の読み聞かせがEQを高める5つの理由

—絵本がEQ力を伸ばしてくれるのはなぜでしょう。

仲宗根:絵本を読むことで思考と感情が調和し、以下の5つの理由からEQ力が高まる効果が期待できます。

①自己肯定感が高くなる
読み聞かせの時間を親子で過ごすことで、子どもは自分が大切な存在だと認識。
②個性・才能を引き出す
様々な絵本に触れることでその子自身が興味・関心を持つものをチョイス。
③共感力が育つ
物語での疑似体験で人の気持ちを理解できるように。
④ポジティブになる
絵本の世界で、成功やしあわせのイメージをインプット。
⑤チャレンジする心が育つ
ポジティブなイメージを持つことで、困難があっても柔軟に対応できる力が身に付く。

—EQを伸ばすような絵本の読み聞かせは、どうしたらいいですか?

仲宗根:前編でお話したように、
①ゆっくり読まない
②声色を変えない
③読んだ後に子どもをほめる
を心がけてください。特に「③読んだ後に子どもをほめる」はEQ力に重要。子どもの才能を伸ばしてくれます。

・絵本の読み聞かせは、子どものIQも高める

—絵本にはIQを伸ばす効果もありますか?

仲宗根:絵本を読むことで、抽象思考(頭の中でまとめる働き)ができるようになるので、いわゆる地頭力理解力にもつながります。発達障害のお子さんのIQ向上に役立っているという声もたくさんいただいています。

EQ力を上げる絵本の選び方:ジャンルを問わず、子どもが楽しめる絵本を

・子どもが夢中になる絵本が、将来につながっている

—EQ、IQを伸ばすためにどんな絵本を選んだらいいでしょうか。

仲宗根:子どもが楽しんで、読み切れる本です。たくさんの絵本が自宅にあればいいですけれど、場所も金額も大変。まずは図書館や本屋さんでたくさん見て、本人の興味を引き出せたら良いですね。自分が読んであげたい本とちがったら、読んで欲しい本も合わせて全部読んであげて。

—仲宗根さん自身、子育てのなかで思い出に残っている絵本はありますか?

仲宗根:長男が3才のとき好きだった『バムとケロのそらのたび』ですね。おじいちゃんが飛行機のパーツを送ってくることから始まる冒険のお話なんですが、3カ月ぐらい毎日読み聞かせを続けました。もちろん他の本も読みながらですけど。

3カ月たったある日、紙を30枚ほど取り出して、一生懸命たくさんなにか書いてるんです。何してるんだろう?と思ったら飛行機の設計図で、「これから飛行機の材料を買いに行こう」って言いだして。毎日同じ絵本に「どうやったら自分で作れるんだろう」とワクワクして、自分がやりたいことに意識をフォーカスしていたんだろうなと思います。

—毎日、頭の中でどんどん設計図が鮮明になっていったんでしょうね。

仲宗根:そしてついに「できる!」って確信して。「何回も同じ本ばかり読んで大丈夫なのか」と心配する方もいますが、それだけ大好きな世界にめぐりあえたということ。がんばって読んであげてほしいですね。

私たち「絵本未来創造機構」の講師も、小さい頃に心に残った絵本が今の自分の性格や職業に結びついている方がほとんどなんですよ。

(『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』より)

EQ力を育てる効果:子どもが夢を叶えられる

・絵本の読み聞かせで肯定すると、精神が安定する

—同じ絵本をとことん読み切った経験は、EQ力向上にもつながりそうです。

仲宗根:そうですね。いつも制限されて「ダメです」ばかり言われていると、心は危機感を感じてしまいます。いつでも「いいよ。OKだよ」と肯定されていると不足感を感じないので、待てるようになったりイレギュラーなことにも落ち着いて対応できたりします。自分とちがう考えの人に出会っても、「私はこうだけれども相手はこう考えるんだね」と認められるので、良い人間関係がつくれるようになります。

EQ力は大人も上げることができます。絵本を通してポジティブな言葉やイメージに触れ、親子で精神を安定させましょう。

—ポジティブではない、こわい言葉がある絵本はどうでしょうか。

仲宗根:たとえば『おおかみと七ひきのこやぎ』のようにネガティブな描写がある絵本も、読むべきではないといった固定観念に縛られる必要はないと思います。子どもがいやがるのに見せることはNGですが、「悲しい」「こわい」といった感情と対になる「うれしい」「楽しい」の感情も知ることができ、EQ力につながります

毎日読み聞かせがあるような安心安全な環境にいると、そういったものも受け入れられるようになります。子どもが目標に向かってまっすぐに行動し、夢を叶えるために、EQ力はとても重要ですね。

まとめ & 実践 TIPS

見えないだけにわかりにくい心の知能指数「EQ」。仲宗根さんおすすめの①ゆっくり読まない②声色を変えない③読んだ後に子どもをほめる読み方なら、時間もかかりません。毎日の絵本の読み聞かせで、親も子もEQ力を高めてみてはいかがですか。

執筆/樋口かおる

前編 絵本の読み聞かせ「ゆっくり読む」はNG。効果的に脳と心を育てる3つのコツ

『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』(仲宗根敦子:著 、篠浦伸禎:監修、ながしまひろみ:イラスト/パイ インターナショナル刊)

プロフィール

仲宗根敦子

親と子のしあわせな未来をつくる、絵本の読み聞かせ方を指導する一般財団法人「絵本未来創造機構」代表理事。大手航空会社に勤務中、長男が2才、次男が0才のときに警察官だった夫が殉職。その後フルタイム勤務のシングルマザーとして、子どもたちに接することができる短い時間のなかでの育児に悩み、息子たちに絵本の読み聞かせを開始。子どもの変化と自身の精神安定から、絵本の良さを実感。その内容を体系化し、1人で講座をスタートさせ2017年に協会設立。絵本講座以外に文章講座、夢を叶える講座などを主催し、小・中・高校・大学や公立図書館、企業等での講演を行う。団体設立からわずか4年で約4万人が講座を体験。
日本全国はもちろん、海外では台湾・シンガポール・イギリス等で、同協会の認定講師、約600人が、絵本読み聞かせのプロフェッショナルとして活躍している

絵本未来 創造機構
https://eq-ehon.com/

プロフィール

篠浦伸禎

都立駒込病院脳神経外科部長。東京大学医学部卒業後、富士脳障害研究所、東京大学医学部付属病院、茨城県立中央病院、都立荏原病院、国立国際医療センターなどで脳外科手術を行う。
1992年、東京大学医学部の医学博士を取得。同年、シンシナティ大学分子生物学部に留学。帰国後、国立国際医療センターなどで脳神経外科医として勤務。2000年より都立駒込病院脳神経外科医長。2009年より現職。脳の覚醒下手術では世界トップクラスの実績を誇り、日本を代表する脳神経外科医。
『人に向かわず天に向かえ』(小学館)、『脳は「論語」が好きだった』(致知出版社)など著書多数

プロフィール

ながしまひろみ

マンガ家、イラストレーター。主な著書に漫画『やさしく、つよく、おもしろく』(ほぼ日ブックス) 、『鬼の子』(小学館) 。初めての絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)にて第一回TSUTAYA絵本大賞 新人賞を受賞

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