ITリテラシーに自信がない?家庭でデジタル教育を進めるには

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プログラミング教育やGIGAスクール構想が開始され、教える学校も、教えられる子どもたちも、手探り状態でデジタル教育が進行中の現在の日本。
だからこそ、そこで差がつくのは≪家庭でのデジタル教育≫ではないでしょうか。
『シン・デジタル教育 10年後、わが子がAIに勝つために必要なこと』(かんき出版)の著者、松林弘治さんにお話を伺いました。

この記事のポイント

親もITを学ぶ姿勢を持っているか

あらゆる製品やサービスにコンピュータが使われ、私たちの日常においても、もはやコンピュータなしでは生活ができない今の時代、今後はさらにAI(人工知能)がさまざまな分野で導入され、それを活用するために、当たり前のようにITリテラシーが求められる時代になっていくでしょう。
そんな社会を生き抜くために、子どもたちのデジタル教育を充実させようと生まれたのが「プログラミング教育」や「GIGAスクール構想」ですが、今は手探り状態で進められているので、目の前の子どものITリテラシーを高めるためには、今後はよりいっそう家庭でのデジタル教育が重要になっていきます。
おうちのかたも相応のITリテラシーが求められることでしょう。

たとえばコロナ禍で、多くの学校の授業が一時オンラインになりましたが、子どもがうまくIT機器を操作できなかった時に、おうちのかたは上手にサポートできたでしょうか。
おうちのかたが理解できないままだと、理解できる親と、そうでない親との子どもの間では、子どもの学びに差が生まれてしまいます。そうならないためにも、理解できないことがあったら、親も子どもと一緒に学べばいいし、学ぶべきだと思います。
大人であっても親であっても、世の中に新しいことが出てきた時は、少しでもキャッチアップする、学んでいくという姿勢を持つことが大事ではないでしょうか。

ITリテラシーを高めたいなら、まずはググり力を鍛えよう

ITリテラシーを高めるために、何から始めればいいのかわからないというおうちのかたでも、普段インターネットで「検索」はするでしょう。
一部では「ググり力」とも呼ばれていますが、検索で自分が今ほしい情報に一番早く、正確にたどり着くキーワードは何か、どうやってたどり着くかと考える力です。
インターネットが普及し、膨大な情報が存在する今、検索するスキルを磨く、これは絶対必要ですし、優れたITエンジニアは、そのスキルがすごく高い。
検索エンジンに、どういうキーワードを2つ3つ入れたらいいのか。「入れる言葉によってどう変わるのだろう」とITエンジニアは考えます。
近い言葉を2つ入れたり、2つ入れる時にちょっと関連する言葉を入れたり、わざと外した言葉を入れたり、アルファベット表記を入れたり……。
「ああ、この言葉を入れると検索結果の優先順位はこう変わるのか」と身を持って体験して、精度を高めていきます。
この力の原動力は物事の仕組みに興味を持ち、「どうやったら一番最適な答えにたどり着けるか」を考える「好奇心」や「探求心」であり、ググり力を鍛えていくことは、ITエンジニアやコンピュータ科学者が日常的に使っている思考法、「コンピュテーショナル・シンキング」を身に付けていくことにもつながっていきます。

コンピュテーショナル・シンキングはこれからの時代の思考法

「コンピュテーショナル・シンキング」とは、プログラミング的思考とほぼ同じですが、コンピュータを活用するうえで持っておくべき思考法のことであり、プログラムを書くスキルではなく、問題解決にあたっての思考法のことです。
もしかしたらこうかなと考えて試してみる、違ったら別のやり方を試してみる、他のやり方はないかとまた考えて試してみる……そういった能動的思考法や学習スタイルが、これからの社会では求められていきます。

家庭でできる コンピュテーショナル・シンキング

コンピュテーショナル・シンキングを身に付けるためには、早くからプログラミングの専門的な勉強をしたり、教科書を使った勉強が必要だったりというわけでは必ずしもありません。コンピュテーショナル・シンキングにつながる素材は、日常生活の中にもたくさんあるのです。たとえば、「こういった時はどうする?」といった親子の会話の中にもありますし、遊びの中にもそのヒントはあります。

遊びながらコンピュテーショナル・シンキングを身に付ける

たとえばどんな子どもでも引き寄せられるものに、ゲームがあります。私は「ゲームをしてはいけないと言わないようにしたい派」ですから(笑)、ゲーム中の子どもにいろいろと質問したり、どこが面白いかを聞いてみたりすることで、子どもが何に興味を持っているのかを知りたいと思っています。ゲームと聞くと、抵抗があるおうちのかたもいらっしゃるかもしれませんが、ゲームから学べることもたくさんあります。
たとえば、コンピュータの動作原理をスマホゲームにした「Human Resource Machine」では、従業員の仕事の手順を組み立てていくのですが、これは遊びながらプログラムを組み立てる練習になりますし、子どもに大人気の「マインクラフト」からも論理的思考法が学べるでしょう。
ゲームはちょっと……という場合でも親子で夢中になれるパズルゲームやブロックスなどのボードゲームでも、楽しみながら自然と論理的・数学的思考法を学ぶことができます。

子どもと一緒に遊びながら、どんどん大人も学ぶ

子どもがよく発する「なぜ?」「どうして?」という疑問は、答えが知りたくて聞いているのではなく、自分なりに考えてみたい、調べてみたいという姿勢の表れです。そういった時に、おうちのかたは、正解を理詰めで語ったり、「そういうものだから!」と一蹴したりするのではなく、「なんでだろうね」と子どもが疑問に思うその気持ちに寄り添い、場合によっては「試してみようか!」と子どもと一緒にやってみるといいでしょう。子ども自身が、自分で答えを導き出す体験を積み重ねることで、学びに対する主体性も身に付けられます。

我々が子どものころには学校にはコンピュータがなくても成立していましたが、それが今では生徒も1人1台コンピュータなどのIT機器を持つようになり、どんどん時代は変わってきています。
今という時代に育っている我が子という存在があるわけですから、大人もその子どもをモチベーションにして、自分もちょっとでも追いついていこう、学ぼうという姿勢が大事です。それはリカレント教育(学び直し)にもつながっていきますし、普段常識にとらわれてしまい、考えつかないようなことが、子どもと一緒に遊ぶことで、子どもから教えられたり気付かされたりすることもあると思います。おうちのかたはそれを最大限に享受し、新しいことはどんどん一緒に学んでいってはどうでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

日常の中で、少し意識することで、コンピュテーショナル・シンキングは鍛えられることがわかりました。「主体的に学ぶ姿勢」は子どもだけでなく、おうちのかたも一緒に身に付けていきたいですね。

プロフィール

松林弘治

松林弘治

ITエンジニア、著述家、IT教育者。
韓国の鮮文大学グローバルソフトウェア学科客員教授、大前研一氏主宰の「ビジネス・ブレークスルー」の子ども向けプログラミング講座や東京都練馬区の公立小学校でプログラミングなどを教えてきた他、保護者や教員向けのITセミナーを多数行う。
近著に『シン・デジタル教育 10年後、わが子がAIに勝つために必要なこと』(かんき出版)がある。

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