直島の古民家を彩る「のれんプロジェクト」とは?一つ一つに込められたのれんデザインの魅力とアートの楽しみ方【直島アート便り】

ANDO MUSEUMの秋・冬限定ののれんは、元々敷地内にあった柿の木がモチーフなっています。

直島の歴史ある集落・本村(ほんむら)には、「のれんの日(後述)」があるのをご存知でしょうか。古い民家にいろんなデザインの「のれん」がかかっている風景をみることができます。今回は、この「のれんプロジェクト」が始まった経緯や魅力についてご紹介します。

この記事のポイント

直島全体を舞台にした展覧会「直島スタンダード展」から始まった

「直島スタンダード展」は、2001年に直島全体を舞台にして行われた展覧会です。
それまでのベネッセアートサイト直島は、主に島の南側のエリアでアート活動を行っていましたが、1998年に島の人々が暮らすエリアでも古い民家をアートプロジェクトとして再生させる「家プロジェクト」が始まり、少しずつ人々の生活の中に活動が広がっていきました。

この「直島スタンダード展」では、訪れる人々に、モノや情報に溢れる日常と距離を置いて、自分がすべきことは何かを主体的に考えていただく機会になることを目指し、島内の様々な場所で作品展示等を実施しました。
のれんの制作はその中の一つの取り組みとして島の方々に協力いただき、14軒の家屋や路地にのれんをかけることで、集落に残る記憶や人々の営みを可視化することを試みました。

「直島スタンダード展」宮浦港の様子(2001年)

のれんのデザインと制作は、岡山県の染織家である加納容子氏に依頼しました。加納氏はのれんをかけてくださる家に足を運び、家主と会話しながら、それぞれの家に合った布地やデザインを提案し制作を進めました。1つ1つののれんのデザインには、家から見える景色の特徴や、お住まいの方の趣味にまつわるモチーフなど、様々なエピソードが残されています。

石川好夫邸ののれんは、中庭にある古くて立派な松の木をイメージしてデザインされました。何度か再制作していますが、いつも同じデザインをリクエストされています。

島の人たちの声から継続することになったのれんプロジェクト

「直島スタンダード展」から2年ほど経ったころ、島の人たちから「あののれんはどうなったのか?きれいだったから私の家にもかけたいので、作ってもらえないか。」という声が島民の方から挙がるようになりました。

2002年以降、直島町まちづくり景観条例に基づくまちづくり活動補助金の対象となり、2004年には「本村のれんプロジェクト実行委員会(現直島のれんプロジェクト実行委員会)」が設置されるなど、行政の支援のもとのれんをかける家も年々増え、本村の町並みも鮮やかになっていきました。

三宅邸ののれんは、家の入口が土壁で囲まれていることから、「どうぞその間をぬって中にお入りください」というイメージでデザインされました。

直島らしい風景に出合える「のれんの日」

こうしてのれんの制作活動は現在に至り、加納氏が手掛けたのれんは50以上となっています。中にはデザインをリニューアルする方や、お店の開店に合わせて新しく制作を依頼する方もいます。
多くののれんがかかるのは、毎月第三日曜日と祝日に設定されている「のれんの日」ですが、日常的にかけている家も少なくありません。「直島スタンダード展」から20年経った今、のれんのある町並みの風景は直島の生活に溶け込み、彩りを加えています。

石川知久邸ののれんは、このお宅のある石場町が埋め立てられる前、陸と海がせめぎ合っていたという場所の特徴が表現されています。

「のれんプロジェクト」は、島の人々にとって、アートは「鑑賞するだけのもの」ではなく、「自ら参加できる身近なもの」であることを実感する機会にもなりました。
地域におけるアートプロジェクトは、そこに住む人々が地元の風景や土地に残る記憶に改めて気づき、捉え直すきっかけになります。
また、島外から訪れる人が、地域の個性や魅力を知るための様々な切り口になるなど、私たちがより良いコミュニティについて考えるためのヒントを提示しているとも言えます。直島での作品鑑賞を通じて、瀬戸内ならではの自然景観や、そこで営まれてきた人々の文化に触れ、これからの暮らしについて考えてみてはいかがでしょうか。

プロフィール

ベネッセアートサイト直島

「ベネッセアートサイト直島」は、直島、豊島、犬島などを舞台に、株式会社ベネッセホールディングスと公益財団法人 福武財団が展開しているアート活動の総称です。訪れてくださる方が、各島でのアート作品との出合い、日本の原風景ともいえる瀬戸内の風景や地域の人々との触れ合いを通して、ベネッセグループの企業理念である「ベネッセ=よく生きる」とは何かについて考えてくださることを願っています。
https://benesse-artsite.jp/

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