「非認知能力」の低下が顕著に。コロナ禍で受ける子どもへの影響

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なかなか収束しない新型コロナウイルス感染症は、学校生活や習い事など、子どもたちの学びに、大きな影響を与えてきました。
一方、学習面の「認知能力」だけでなく、勉強に対する集中力や、精神的な安定といった、「非認知能力」にも影響を及ぼすことがわかってきました。特に低学年段階では、学校行事や体験活動の工夫が求められそうです。

この記事のポイント

数値では測れない、粘り強さや協調性

非認知能力とは、知能指数(IQ)などのテストで数値化できる知識や思考力などの認知能力と違い、目に見えにくい能力一般を指します。
具体的には、意欲や、興味・関心を持つこと、忍耐力や粘り強さ、協調性などです。

経済協力開発機構(OECD)では、これに当たるものとして「社会情動的スキル」を重視しています。新学習指導要領でも、社会や世界と関わり、よりよい人生を送るために育成すべき資質・能力の一つとして「学びに向かう力・人間性等」を位置付けています。

非認知能力が、子どもの将来に重要であることを示す研究も、数多くあります。
特に幼児期で、遊びや他者とのかかわりを通して、非認知能力を育成することに、注目が集まっています。また、学校では授業だけでなく、学校行事や課外活動など、さまざまな体験を通して育むことができると注目されています。

休校の長期化で低下

日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、コロナ禍における臨時休校や、学校の教育活動の制限が、子どもの教育格差や非認知能力に及ぼす影響を調べています。調査は、小学生から高校生までの子どもを持つ保護者4,000人を対象に、インターネットで行われました。
2020年1月から5月にかけての臨時休校の期間別に、非認知能力と生活習慣等の低下との関係を見たところ、「友達と遊ぶ頻度」の低下の度合いは、「臨時休校なし」の場合は14.4%でしたが、休校期間が長くなるにつれ増加し、「2か月以上の臨時休校」になると、約41.8%に上りました。
「学校での生活や活動の充実」の低下の度合いは、「休校なし」の場合は11.9%、「2か月以上の臨時休校」では30.7%になっています。「規則正しい起床・就寝」「勉強に対する集中」「精神的な安定」も同様に、臨時休校が長期化すると、顕著に低下しました。

失われた体験の機会を取り戻す

学校行事の中止や縮小は、「自分自身に自信を持てていた」「思ったことを言葉に出して表現できていた」などの非認知能力に、マイナスの影響があることも明らかになりました。
小学生では運動会や体育祭・球技大会、中学生では学芸会・文化祭や遠足、高校生では修学旅行・移動教室の中止や縮小が、非認知能力に悪影響を及ぼしています。

日本財団などでは、結果を受けて、低年齢の子どもに対して、学校内外で失われた機会をカバーする努力が求められると指摘。運動会や修学旅行などの学校行事を重点化して行うなど、体験の機会を提供することを提案しています。

まとめ & 実践 TIPS

小中学校では2021年度、感染対策を工夫して学校行事に取り組むところも多く、先生も子どもたちも、期待を膨らませていることと思います。感染症予防などの対応で増える学校や保護者の負担と、非認知能力の育成につながる学校行事や体験活動の重要性の、両方のバランスを取った実施の工夫が求められます。
また、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)では、幼児教育と小学校教育を円滑につなげるための特別委員会が始まりました。コロナ禍で明らかになった課題に向き合い、非認知能力の育成にも注目した議論が期待されます。

(筆者:長尾康子)

※ 日本財団 コロナ禍が子どもの教育格差と非認知能力にもたらす影響を調査
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210629-58885.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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