95年の歴史を持つ科学雑誌の編集長が教える、冬休みの自由研究

お子さんに理科好きになってほしいと考えている保護者のかたは多いのではないでしょうか。
今回は科学好き・理科好きの親子にたくさんの愛読者を抱える『子供の科学』(誠文堂新光社)の編集長・土舘建太郎さんに、子どもと科学の関わりや冬休みにおすすめの自由研究のアイデアを教えていただきました。

ワークショップでも「リケジョ」増加中?自分の手を動かすことは理科でも大切

『子供の科学』では、子どもに向けて電子工作やプログラミングのワークショップを行っています。こうしたイベントを通して感じるのは、自分なりに工夫して取り組むことの大切さです。思考力が重視されている今の時代に、机の上だけでなく、自分の手を動かしながら理科や科学に接する経験があると、より身近に、実際の社会で理科や科学の原理が使われていることを体感すると思います。

理科が苦手なお子さんの場合も、図工など手を動かすことが好きであれば、自分の手で物を作り上げる体験から、「なんで動くの?」「どんな材料がいいだろう?」といったきっかけで科学への興味が引き出されることもあります。

最近では、こうしたイベントに女子児童が参加する割合も増えてきました。小学生の場合、女子のほうが早熟で器用に物事に取り組むため、テキパキとした積極的な姿勢には頼もしい気持ちになります。

雪が降ったらチャンス! 雪の結晶を撮影して自由研究にしよう

自分の手を動かして、現実の社会で起こっていることと理科の知識を結び付けるには、実験や自由研究も一役買います。今回は、冬ならではの自由研究のアイデアをご紹介します。

【雪の結晶を撮ってみよう】
雪が降ったら、雪の結晶の形を撮影し、その形を調べて自由研究にまとめてみるのはいかがでしょうか。雪の結晶といえば六角形のものを思い浮かべるかたが多いと思いますが、実は温度や水蒸気の量など、雲の中の条件によって結晶の形は変化します。

<用意するもの>
●スマートフォン(テジタルカメラなどでもOK)
●雪を受ける黒っぽい布(アクリルなどの化学繊維のものがおすすめ。マフラーでもよい)
●防寒着、手袋(指先が着脱できるものや、スマホ操作対応のものがおすすめ)
●スマホ用マクロレンズ(またはルーペ)
●定規や1円玉などスケールがわかるもの

<手順>
1)マクロレンズや雪を受ける黒い布はあらかじめ外に出して冷やしておく(撮影の1~2時間前が目安)
2)スマホは充電しておく
3)防寒着を着て外に出たら、撮影スタート
4)布で雪をキャッチしたら、布とスマホをできるだけ平行にして狙いをつけた結晶にピントを合わせる。スケールがわかるように、最初に1円玉などを一緒に入れた写真を撮影しておくとよい

<まとめかた>
雪の結晶の分類は、インターネットで調べることができます。撮影した結晶がどのような分類でどんな条件下でできたのかを考えてまとめたら、自由研究の完成です。

【家で雪の結晶を作ろう】
雪が降らない地域の場合は、自分で雪の結晶を作る方法もあります。

<準備するもの>
●1.5リットルの円筒形ペットボトル
●釣り糸(今回は、1号<太さ約0.165mm>のものを使用)
●釣りおもり(糸を結ぶリングがあるもの。今回は10号のものを使用)
●発泡スチロール保冷箱(フタ付きで、ペットボトルが肩まで入る深さのもの)
●ドライアイス(保冷箱の大きさにもよるが、2kgあれば1~2回実験できる)
●軍手、新聞紙、カッター、コンパス、懐中電灯、千枚通し、木槌、セロハンテープなど

<手順>
1)ペットボトルの直径を測り、保冷箱のフタの中央にペットボトルが入るサイズの穴をコンパスとカッターを使って開ける
2)50cmほどの長さに切った釣り糸の中央におもりを通し、ペットボトルの中に入れる
3)おもりがペットボトルの底ギリギリになるようにし、糸の先をボトルの口にセロハンテープで留める(糸をピンと張るのがコツ)
4)中の空気が冷えて縮んだときにペットボトルがゆがまないように、キャップの真ん中に千枚通しで穴を開ける
5)ペットボトルの中に息を吹き込んでからキャップを取り付ける。キャップを締めるときには、ボトルの中の糸がねじれないように注意
6)ペットボトルを保冷箱の中央に立て、周囲に木槌で叩いて砕いたドライアイスを入れる(箱が大きいときは、壁際に新聞紙などを詰めるとよい)。軍手をして作業をしよう
7)保冷箱のフタをかぶせ、静かに置いておくと、しばらくして糸の周りに雪の結晶ができてくる

出典/子供の科学2018年2月号
実験考案/山村紳一郎

『子供の科学』の編集部には、自由研究でこんなことに取り組んだ、こんな物をつくった、という投稿がたくさんやって来ます。自分の好きなテーマを見つけて取り組む子どもたちのレポートや工作は、どれもキラキラしています。中には保護者の方の趣味(?)がテーマになっていたりして、お父さんやお母さんまで楽しんで手伝っている様子が伝わってくるものもありますが、そういう作品は子どもも心から楽しんで取り組んでいます。
どんなきっかけでもいいので、自由研究が子どもの好奇心を引き出すものになるといいなと思います。そして、『子供の科学』は夏や冬の宿題だけでなく、1年中、いつでもどこでも自由研究! というつもりでつくっています。

プロフィール

土舘建太郎

学習院大学卒業後、フィットネス雑誌編集部に所属。誠文堂新光社に移り、『愛犬の友』編集部を経て『子供の科学』編集部へ。2015年より編集長。誌面と連動したキットを提供するECサイト「KoKa Shop!」(shop.kodomonokagaku.com)を立ち上げる。



***書籍紹介***



『子供の科学』2020年1月号の別冊付録「リチウムイオン電池まるわかりBOOK」では、2019年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生オススメ実験を収録。「リチウムってなに?」、「どうやって開発されたの?」といった疑問をていねいに解説しています。読んで、実験して、ノーベル賞研究のおもしろさを実感できます。特集は2020年の干支にちなんだ「ネズミ研究最前線」。世界と日本のネズミが大集合。哺乳類全種の約3割を占める“最も繁栄している哺乳類”ネズミを知れば、哺乳類の進化や生態のヒミツが見えてきます。プログラミング学習や実験・工作の記事が充実した雑誌『子供の科学』は毎月10日発売です。
https://www.seibundo-shinkosha.net/magazine/

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