通級指導を受けている子どもが9万人を突破

障害のある子どもたちのうち、一般の小中学校の通常学級に在籍しながら、必要に応じて別教室で指導を受ける「通級による指導」の対象者が、2015(平成27)年度に初めて9万人を超えたことが、文部科学省の調査でわかりました。通級指導は大きな成果を上げていますが、まだまだ課題も多く残っているようです。

対象の約半数が発達障害

調査によると、2015(平成27)年5月1日現在で、公立小中学校で通級指導を受けている児童生徒の数は、小学校が8万768人(前年度比7.2%増)、中学校が9,502人(同13.3%増)の計9万270人(同7.8%増)。学習障害など発達障害のある子どもたちが通級指導の対象となったのは2006(平成18)年度で、その時の通級指導の対象者は4万1,448人でしたから、9年間で約2.2倍にまで増えた計算です。

通級指導を受けている子どもたちを障害別に見ると、言語障害が39.1%、注意欠陥多動性障害(ADHD)が16.2%、自閉症が15.7%、学習障害(LD)が14.6%、情緒障害が11.8%、難聴が2.3%、弱視が0.2%などとなっており、現在ではいわゆる発達障害の子どもたちが約半数を占めています。通級指導教室などでの指導時間を見ると、週1時間が52.1%、週2時間が30.8%で、週に1~2時間の指導が全体の82.9%となっています。

大きく増えている通級指導ですが、課題もありそうです。その一つは、通級指導教室の設置校の少なさです。通級指導教室を設置している公立小中学校は4,028校(小学校3,308校、中学校652校など)で、小中学校全体の13.2%にすぎません。自校に通級指導教室がない子どもたちは、他の通級指導教室設置校や特別支援学校に他校通級するなどしています。小中学校全体では、自校通級が46.5%、他校通級が46.6%、巡回指導が6.8%となっています。

もう一つの課題は、小学校に比べて、中学校での通級指導が少ないことです。障害が軽減されて通級の必要性が少なくなったのならば問題はないのですが、実際はどうなのでしょうか。都道府県による差も大きく、たとえば、島根県では315人、愛媛県では201人の中学生が通級指導を受けている一方で、100人に満たないという県も少なくありません。

望まれる通級指導への理解

最大の課題は、通級に対する理解不足でしょう。通級指導の内容は、障害による学習上・生活上の困難の改善・克服を目的とする「自立活動」などが中心となっていますが、理解不足からくる偏見もまだあるようです。子ども自身にとっても、成長するにしたがい、通常学級から一時離れることへの抵抗感が強くなってくるようです。

文科省は、現在小中学校に限られている通級指導を、高校まで拡大する方針を打ち出しており、2018(平成30)年度から開始する方向で検討しています。しかし、ここでも通級に対する子どもの抵抗感の軽減、同級生や保護者など周囲の理解が、実施に向けた大きな課題として挙げられています。

通級指導に対するニーズは、今後も増えていくことは確実でしょう。通級指導教室の設置校の増加、通級指導教員の増員などの体制整備とともに、通級指導に関する理解がさらに進むことが望まれます。

  • ※平成27年度通級による指導実施状況調査結果
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2016/05/02/1370505_03.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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