問題集は「つまみ食い」がベター! 「実験心理学」による効率的学習法【後編】

分散学習やテストを活用した復習のほかにも、効率的な勉強法はいろいろとあります。いずれも実験心理学によって科学的に裏付けられたものですから、ぜひ毎日の学習に取り入れてください。引き続き、日本女子大学教授の竹内龍人先生が解説します。

問題集は一冊に絞り込まず、「つまみ食い」をするほうがよい

テスト効果に関連し、「中間テスト効果」と呼ばれる不思議な現象もあります。例えば、まず国語の題材1を勉強したあと、数学の題材2の勉強をするとします。このとき、題材1と題材2の勉強の合間に、題材1に関する小テスト形式の復習をはさむと、題材2の理解まで深まることが実験で明らかになっています。それぞれの題材の内容には関連がないにもかかわらず……なんとも不思議な効果です。この効果の理由は明らかにされていませんが、テストをはさむことで記憶を呼び出す働きが強まるからではないかとも言われています。

日々の学習にテスト効果を取り入れる際は、できるだけいろいろな種類のテストを行うといいでしょう。例えば、問題集の練習問題でもいいですし、暗記カードを使ったり、誰かに質問して答えたりする形式でもいいでしょう。また、問題集は一冊に絞り込んで集中するのがよいという考え方もありますが、あれこれと「つまみ食い」をしてみるほうがいいかもしれません。フリースローの効率的な練習法のところで説明したように、分散効果が表れやすくなりますし、さまざまな場面に柔軟に対応する力が伸びることも期待できます。

「系列位置効果」を理解して、学習の順序を決めよう

次に、「系列位置効果」を利用した学習法について説明しましょう。系列位置効果とは、学習する際に初めに学んだことと終わりに学んだことの理解が深まりやすいことを言います。例えば、こんな学習をする人はあまりいないかもしれませんが、アルファベット順に英単語を学習するとしましょう。すると、ABC……と進むにつれて思い出せる量は減少し、終盤の……XYZになると再び思い出せる量が増えていきます。

これは、中間に学習した内容は、前後の内容と混同しやすいことが理由と考えられています。この効果を逆に利用すると、しっかりと学びたい科目や分野は、一日の最初か最後に勉強するとよいということになります。また、勉強する科目などの順番は、毎日変えたほうがよさそうです。

十分な睡眠が「ひらめき」をもたらしてくれる

最後に、学習における「睡眠」の大切さについて、実験心理学の観点から述べたいと思います。

3つのグループが次のような条件で2回ずつ、90問の数列問題に取り組みました。数列問題は、あらかじめ教えられた規則に従って計算する形式でした。

グループA:1回目を朝に行い、そのまま起きていて、2回目を夜に行う。
グループB:1回目を夜に行い、十分に睡眠を取り、2回目を朝に行う。
グループC:1回目を夜に行い、徹夜して、2回目を朝に行う。

実は、この数列問題には、教えられた規則とは別に非常に簡単な解き方がありましたが、そのことは参加者には知らせていませんでした。どのグループの参加者も1回目は簡単な解き方にほとんど気づきませんでしたが、2回目はグループBの参加者の多くが気づきました。ところが、ほかのグループの参加者の多くは気づかないままでした。

この実験から、しっかりと睡眠をとると頭がさえ、ひらめきを得やすいことがわかります。もっとも、別の実験では、単に寝るだけでは効果はなく、十分に学習して考えてから寝るとひらめきやすいこともわかっています。つまり、テスト前に徹夜してもよいことはありません。しっかりと学習して、たっぷりと寝ることが睡眠効果を十分に引き出す秘訣と言えます。

※ここで紹介した実験の詳細は、竹内先生の著書『実験心理学が見つけた超効率的勉強法』に収録されています。

プロフィール


竹内龍人

日本女子大学人間社会学部心理学科教授。博士(心理学)。1964年生まれ。京都大学文学部心理学専修卒業。東京大学大学院、カリフォルニア大学バークレー校心理学部、日本電信電話株式会社(コミュニケーション科学基礎研究所)を経て現職。認知心理学の研究に取り組む。

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