テストを活用した復習で効率アップ! 「実験心理学」による効率的学習法【中編】

前編で解説した「分散学習」の方法は、学習のいろいろな場面に取り入れるだけではなく、スポーツや芸術などの上達につなげることも可能だといいます。引き続き、日本女子大学教授の竹内龍人先生にお話を聞きました。

分散学習を活用して「暗記カード」の学習を効率的に

分散学習を意識すると、「暗記カード」を用いた学習の効率も高められます。ここに50個の単語が書かれた50枚のカードがあるとしましょう。50枚のカードを一気に勉強するのが、最もシンプルな学習法です。しかし、それでは頭がパンクしそうになるため、まず5枚に集中して覚えられたら次の5枚というように、10回に分けて勉強する人もいるかもしれません。確かに、あとのやり方のほうが確実に覚えられそうな気もします。

ところが、それぞれの方法を数日間続けたあとにテストを受ける実験では、カードを分けずに学習したグループのほうが得点は高くなりました。50枚のカードで勉強すると、終盤に差しかかるころには最初の単語は忘れかけているでしょう。そのため、「間隔を空けるとよい」という分散効果が発揮されるのです。

「フリースロー」の練習にも分散効果の影響が表れる

分散効果が働くのは、勉強だけではありません。バスケットボールのフリースローの練習に関する興味い深い実験を紹介しましょう。

グループAとBの選手が12フィートの距離からフリースロー対決をする3日前に練習をしました。
Aの選手は12フィートの距離から投げる練習を120本行いました。一方、グループBの選手は、8フィート、12フィート、15フィートの距離で40本ずつ、計120本の練習をしました。本番では、どちらが勝ったと思いますか。12フィートの距離でみっちりと練習したグループAと思うかもしれませんが、実際に勝ったのはグループBでした。これも、分散効果の影響と考えられます。

ここまで間隔を空けて学習する分散学習のメリットを説明しましたが、短期間で集中的に学習する「集中学習」が適した場面もあります。一つは、勉強した内容の理解が不十分な場合です。理解が不十分な内容は記憶できませんから、授業でわからないことがあったら、あまり時間を空けずに理解できるまで復習しましょう。そして理解してから数日後に復習すれば、分散効果が期待できます。

また苦手科目の対策にも集中学習が向いています。数学が苦手なら、比較的易しい数学の問題集に集中的に取り組んでみましょう。すると、最初に抱いていた拒否感が次第に薄れていくはずです。これは、くり返し接するうちに好意を抱きやすくなる「単純接触効果」と呼ばれる心の働きを利用した学習法です。

「分散効果」と一緒に学習に取り入れたい「テスト効果」

続いて、「分散学習」と並んで効率的な学習法とされるテストを活用した復習について説明しましょう。これは、勉強にテストを取り入れることで、全体の学習時間を減らす一方で得点を高めることが期待できる学習法です。

外国語の単語を勉強したあと、グループAは読むだけの復習、グループBは小テストを利用した復習をしました。その後のテストの結果では、グループBがグループAを大きく上回りました。この実験結果から、読むだけの復習をするよりもテストをするほうが、同じ学習時間であれば得点はずっと高くなることがわかりました。教科書や参考書を読むだけの復習は効率的ではなく、テストを利用して「思い出す努力」をすることが重要なのです。

これは覚えることと、思い出すことが全く異なる働きであるという脳のしくみが関係しています。どれだけたくさん覚えても、それを思い出せなければ意味がありません。テストによる復習をくり返すことで、蓄えられた記憶が思い出しやすい形に変形されるのではないかと考えられています。

後編では、実験心理学に裏付けられた「中間テスト効果」「系列位置効果」などについて説明します。

プロフィール

竹内龍人

竹内龍人

日本女子大学人間社会学部心理学科教授。博士(心理学)。1964年生まれ。京都大学文学部心理学専修卒業。東京大学大学院、カリフォルニア大学バークレー校心理学部、日本電信電話株式会社(コミュニケーション科学基礎研究所)を経て現職。認知心理学の研究に取り組む。

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