正課の「土曜授業」は4校に1校

文部科学省の調査によると、2015(平成27)年度に「土曜授業」を実施した公立小中学校は、約4校に1校程度の割合であることがわかりました。意外に少ないと感じる保護者も多いのではないでしょうか。理由は、土曜授業の中身の違いにあります。ここでもう一度、文科省が進めている土曜授業について考えてみましょう。

  • ※平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1368193.htm

公立学校は現在、学校週5日制となっていますが、2013(平成25)年11月に学校教育法施行規則が改正され、教育委員会が必要と判断すれば、土曜日にも授業などが実施できるようになりました。実質的には2014(平成26)年度から「土曜授業」が解禁されたわけです。

それ以前から、東京都など一部の教育委員会では土曜授業実施を認めていたところもあり、文科省の解禁方針によって、学力向上などを目指して、土曜授業に踏み切る小中学校が増えるのではないかと言われていました。ところが文科省の調査結果を見ると、解禁2年目を迎えた2015(平成27)年度でも「土曜授業」を実施している小学校は24.6%、中学校でも25.0%でした。地域差はあるものの、土曜日に教育活動を行っている公立学校は、少なくありません。にもかかわらず、小中学校ともに約4校に1校程度しか土曜授業を実施していないというのは、どういうことなのでしょうか。

それは、一般社会が受け止めている土曜授業と、学校における「土曜授業」の間に違いがあるからです。一般的に土曜授業といわれている活動は、(1)教育課程内の授業を土曜日などに実施すること=「土曜授業」(2)教育課程外の学習を土曜日などに実施すること=「土曜の課外授業」(3)教育委員会または外部の団体などが中心となって土曜日などに外部講師などによる教育活動を行うこと=「土曜学習」……の三つに分けられます。つまり「土曜授業」は、正確には(1)の場合のみを指し、それを行っている公立小中学校は約4校に1校程度だということです。「土曜授業」実施校の年間実施回数を見ると、「月1回程度」が小学校55.4%、中学校53.4%、「学期に1回程度」が各39.4%、40.6%、「月2回程度」が各5.0%、5.5%などとなっています。

一般的には、学力向上などのために、土曜授業が解禁されたと受け止められがちですが、文科省が示した方針は「学校における授業や地域における多様な学習、文化やスポーツ、体験活動等の機会」など、土曜日ならではの教育活動の機会を子どもたちに提供することに主眼が置かれています。このため、単純に時間割にある授業を土曜日に実施するような学校は少ないというのが実態なのです。

ただ、小中学校では授業時間数のやりくりに苦労していることも事実で、次期学習指導要領では、小学校の英語の教科化など、授業時間の確保が大きな問題となっています。また、学力向上は依然として大きな課題であり、今後「土曜授業」の実施校が増えてくるかどうかが、注目されるところです。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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