就活に不可欠な<異なる人>とのコミュニケーション能力

日本経済団体連合会(経団連)の2015(平成27)年度新卒採用に関するアンケート調査によると、企業が大学生の採用選考に当たって重視した項目のトップは「コミュニケーション能力」でした。グローバル化の進展に伴い、文化や価値観、意見の異なる者などと一緒に仕事をしていけるかどうかが、ますます問われることになるでしょう。

  • ※2015(平成27)年度新卒採用に関するアンケート調査結果
  • http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/012.html

調査は2015(平成27)年9~10月、経団連加盟の1,331社を対象に実施し、うち790社(59.4%)から回答を得ました。2015(平成27)年4月入社の新卒採用の選考に当たり「特に重視した点」(複数回答)を聞いたところ、最も多かったのは(1)「コミュニケーション能力」で85.6%、次いで(2)「主体性」が60.1%、(3)「チャレンジ精神」が54.0%、(4)「協調性」が46.3%、(5)「誠実性」が44.4%という順になっています。 さらに6位以下を見ると、(6)「責任感」27.4%、(7)「論理性」27.2%、(8)「潜在的可能性(ポテンシャル)」20.8%、(9)「リーダーシップ」20.5%、(10)「柔軟性」16.8%と並んでいますが、いずれも10~20%台にとどまっており、上位5位以内の項目と大きな開きがあります。

このことから、現在の企業が大学生の新卒社員に求めている主な力は、「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」の3つであり、続いて「協調性」と「誠実性」であるといえるでしょう。

特に「コミュニケーション能力」は、8割以上の企業が挙げているだけでなく、前年度調査と比較しても2.9ポイント上昇しており、重視する企業が増えています。また、「チャレンジ精神」も前年度より1.1ポイント増、「誠実性」も4.1ポイント増となっているのに対して、「主体性」は1.1ポイント減、「協調性」も1.8ポイント減となっています。順位自体は前年度と変わらないものの、「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」「誠実性」がややポイントを上げ、「主体性」と「協調性」が少し減少しているということから、現在の企業がどんな人材を欲しているのかをうかがうこともできそうです。

一方、大学教育との関係では、「専門性」は10.7%、「学業成績」は4.8%に過ぎませんでした。他の調査項目の「選考における学業成績の重視度合い」を見ると、学業成績を「かなり重視した」は3.5%、「やや重視した」は41.1%でした。逆に「重視しなかった」は6.5%、「あまり重視しなかった」は20.1%で、残りは「どちらとも言えない」27.9%などとなっています。経済界は大学教育にさまざまな提言を行っていますが 、実際には企業の半数以上が、相変わらず教育の成果であるはずの成績などを、採用選考で重視していないというのは、大きな問題といえます。

グローバル化で、語学力や海外留学などの重要性が叫ばれています。しかし、採用選考の重視項目で「語学力」は5.4%、「留学経験」は0.4%のみでした。企業は、直接的な語学力や留学経験ではなく、そこからどんな力を身に付けたかを重視しているようです。 いずれにしろ、大学生の就職活動において、これからも「コミュニケーション能力」などが重視されることになりそうです。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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