就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭から

若者や子どもたちに必要な能力には、さまざまなものがあります。現在の社会が求めている力のひとつとして、「コミュニケーション能力」が挙げられることは、間違いないでしょう。場合によっては、就職すら左右するというのです。

全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が2009(平成21)年秋に実施した「学生生活実態調査」によると、目上の人との会話が得意で、家族との会話が多い学生ほど、就職内定率が高いということがわかりました。大学4年生を対象にした調査項目で、就職内定を得た者の回答と、4年生全体の平均回答を比較すると、
「友人の数は多い」(内定者60.9%、全体平均54.6%)
「クラスやサークル等の団体の中でリーダーシップを発揮する」(各43.2%、39.0%)
「目上の人との会話が得意」(各75.7%、70.2%)
「家族との会話が多い」(各71.2%、67.2%)
「自分の主張より周囲の意見を尊重する」(75.0%、72.9%)
など、就職内定を得た者の回答率のほうが、いずれも高くなっています。

なぜ、そうした差がつくのでしょうか。現代の若者や子どもたちの対人関係に関する能力については、「良好な対人関係をつくる能力が低下している」という否定的な見方がある一方で、「周囲の人間関係を的確に把握して、それに自分を合わせるなど高い能力がある」という肯定的な見方もあります。ただ、今時の子どもたちには、仲間同士では必要以上に気を使うのに対して、大人など異世代や仲間以外に対する人間関係には無関心という傾向もあるように思われます。いずれにしても、昔に比べれば、全体的なコミュニケーション能力は低くなったと言っても過言ではないでしょう。
これから始まる新学習指導要領では、すべての教科をとおして、言語力や表現力を育成することに力を入れています。実は、そのねらいのひとつが、コミュニケーション能力の強化なのです。また、企業なども、最近のさまざまなアンケートなどを見ると、採用に当たっては、学力や専門知識よりもコミュニケーション能力を重視するところが増えています。
もちろん、そうした傾向に対する懐疑的な声もあります。対人関係などは個人の資質によるところが大きいので、重視するのは好ましくないという指摘があるほか、コミュニケーション能力の重視は組織への同調を求めるものにすぎないと批判する向きもあります。しかし、嫌なことや反対意見を言う人間などに遭遇した時に、「うざい」の一言で無視するような対応しか取れないのでは、やはり困ります。

基礎的学力の重要性は、いつの時代でも変わりません。そのうえで、考え方や意見が異なるさまざまな相手と、きちんとした関係が築ける力という意味で、コミュニケーション能力が今、いっそう求められているのではないでしょうか。そして、先の調査結果が示すように、家庭における保護者の役割が大切であるということは、言うまでもありません。


プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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