ささやかな非日常体験!家族で天体観察を楽しむためのポイントは?

家族で天体観測を楽しむためのポイントは? ささやかな非日常体験!

「子どもが毎日、ベランダから月や星をじっと見ているみたい」
お子さまが夜空に興味を持ち始めると、保護者のかたとしては「理科が好きになってくれるかも」と楽しみなのではないでしょうか?

そのタイミングで、ご家族がちょっとした働きかけをすることで、お子さまの「月や星のことをもっと知りたい」という意欲が高まり、やがては天文や宇宙への関心へと育つかもしれません。
その入り口として、星座の知識などを身に付ける前に、まずは家族で夜空を眺めに出かけてみませんか?
この記事では、国立天文台天文情報センター長の渡部潤一さんにご協力いただき、天体観察の基本とコツについてまとめました。
「家族で天体観察してみたい!」と思ったときの参考にしてみてください。

天体観察の持ち物は「ゆったり過ごす」をイメージして準備を

天体観察の持ち物は「ゆったり過ごす」をイメージして準備を

天体観察へ出かけるにあたって、まず前提として意識したいのは「屋外で長時間過ごす」ことです。

月や惑星、明るさの等級が1.5等級未満の一等星(『等級』は星の明るさを表す単位)はすぐに見えても、それよりも暗い星々を目でとらえられるようになるには5~10分程度かかるとされています。
だからこそ、星が見えてくるのを待つ時間に「寒くて我慢できない」「虫に刺されてしまった」などとならないよう、屋外で快適に過ごすための準備が必要です。

特に、春先や秋口など昼夜の気温差が大きい季節は、夜になると意外に寒いもの。
しっかりと防寒対策をして出かけましょう

なかでも渡部さんが「持っていくと便利」とすすめるのは、アウトドア用の折り畳みチェアやレジャーシート。
立ったまま空を長時間見上げるのは疲れてしまうので、座ったり寝転んだりできるアイテムを持参すると役立つそうです。
ここでは、天体観察をするときの基本的な服装や持ち物を紹介しますので、あとは屋外での過ごし方やお子さまの体質などにあわせてご準備ください。

■天体観測のための服装・持ち物

●服装
季節を問わず、歩きやすい服と長袖・長ズボンの服、帽子が基本。夏でも虫刺され防止のためあまり肌を出さない服装がよいでしょう。冬は手袋やマフラー、ダウンジャケットなどでしっかり装備を。歩くときに両手が空くよう、荷物はリュックにまとめるのがおすすめです。

●あると便利な持ち物リスト

・折り畳みチェア
・レジャーシートやアルミシートなどの敷物
・スマートフォン(星座アプリや、GPSアプリを入れておくと便利)、バッテリー
・飲み物、おやつ
・虫よけスプレー、かゆみ止め(夏)
・使い捨てカイロ(冬)
・ゴミ袋
・懐中電灯

天体観察に向いている時間・場所は?

天体観察に向いている時間・場所は?

●時間
天体観察は基本的には夜に行うので、「日没後に出かければよいのでは?」と考える人が多いのではないでしょうか。
確かにそのとおりなのですが、季節によって日没時間は大きく変わります。
少し先の予定を立てるときは、その時期の日没時間をインターネットなどで調べてから計画を立てるとよいでしょう。

また季節を問わず、月が地球から見えない新月(月の満ち欠けの始まりの月)の日は、月の光がないため星座の観察に最適です。
月の満ち欠けはインターネットで確認できるので、新月前後をねらって出かけるのもおすすめです。

●場所
視界が大きく開けた場所だと、たくさんの星が見えそうですね。
ただし公園などは意外に街灯が多く、空が明るくて星が見えにくい場合も少なくありません。
逆に都会でも、ビルとビルの間など意外に街灯が少なく、天体観察に向いた場所もあります。

近い場所なら事前に出かけて、「どのくらい暗いか」を下見しておくと万全です。

なお、小学校中学年以降になると「クラスの友達どうしで行きたい」と言い出すお子さまもいるかもしれません。
しかし観察は暗い場所で行うため、子どもだけだと心配です。必ず大人が1名以上は同行してください。
流星群などの天体イベントをねらって、家族数組で出かけるのも楽しいかもしれませんね。

まずは肉眼で天体観察をスタート

まずは肉眼で天体観察をスタート

「天体望遠鏡や双眼鏡がないと星が見えないのでは?」と感じる人もいるのではないでしょうか。
確かに、このようなツールを使いこなすことができれば、肉眼では見えない天体をたくさん観察できそうです。

でも、天体観察を始めるにあたって大切なのは「星を見る楽しさを知ること」。
「道具をそろえてから」と思うとなかなかアクションを起こせないので、最初は肉眼で気軽に星を見るところから始めてみましょう。
天体観察に何回か出かけて、お子さまが「もっとたくさん、いろんな天体を見たい」と言い出したら、まずはレンタルで一定期間使ってみるのもひとつの方法です。

リアル夜空ばかりでなくプラネタリウムも積極的に活用したい

リアル夜空ばかりでなくプラネタリウムも積極的に活用したい

「天体観察ができるスポットが見つからない」「夜に家族で外出するのは難しい」といった場合は、プラネタリウムで天体観察気分を味わうのもおすすめです。
実は日本にはプラネタリウムの施設数が非常に多く、世界でも有数の「プラネタリウム大国」といわれています。

プラネタリウムデータブック | JPA | 日本プラネタリウム協議会

それぞれの施設では、スタンダードな内容から人気キャラクターが登場するエンターテインメント的なものまで、さまざまなプログラムを投影しています。
お住まいの地域にある施設はもちろん、家族旅行のついでに有名なプラネタリウムへ足を伸ばすのもよいですね。

まとめ & 実践 TIPS

「天体観察」というとハードルが高く感じるかたもいらっしゃるかもしれません。
「屋外で過ごすための服装や持ち物を整えて、街灯の少ない場所でゆったり月や星を見る」と考えれば、グッと実行しやすくなるのではないでしょうか。
週末や長期休みに、「夜に出かけて天体観察をする」という非日常体験を持つことで、家族の楽しい思い出をひとつ増やしてみませんか。

プロフィール



国立天文台 天文情報センター長 上席教授。元国際天文学連合会副会長。日本を代表する天文学者の1人として天文学の普及に尽力する。『親子で楽しむ 星空の教科書』(渡部好恵さんとの共著 講談社)など著書多数。

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