変わる大学入試 小中学生が今から身に付けておくべき力とは?【前編】‐小泉和義‐

文部科学省が「高大接続改革」の一環として、高校版全国学力テストともいうべき「高等学校基礎学力テスト」と、大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」(いずれも仮称)の創設を検討していることは、当コーナーでもたびたびお伝えしてきました。">大学入試の改革議論が進んでいます。具体的に、小中学校での学習は今後どのように変わっていくのでしょうか。また、来たるべき入試に備えてどのような力を身に付けておいたらよいのでしょうか。小中学生の保護者のかたにぜひ知っておいてほしい大学入試改革にまつわるお話を、ベネッセ教育総合研究所・情報企画室長の小泉和義さんに伺いました。



「知識・技能」を問う入試から、「思考力・判断力・表現力」を問う入試への転換

現中1が高3になる2020(平成32)年から、大学入試センター試験を「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に変える方向で検討が進んでいます。もちろん、変わるのは名称だけではありません。知識や技能を中心に問われていた入試から、「思考力・判断力・表現力」を問う入試に変わっていきます。「正解」のないこれからの社会を生き抜いていくためには、いくら豊富な知識や技能を持っていたとしても、それらを活用しながら、主体的に課題を発見し、解決策を見つけ出していくことができなければなりません。その力の中心になるのが「思考力・判断力・表現力」です。そうした力を大学でもしっかり育成していくために、その入り口である大学入試でも問うという流れになっているのです。
今、進められている改革の議論は、大学入試にとどまらず、小学校から高校の教育内容を含めて全体で議論されており、小中学校での授業やテストも変わっていくでしょう。



各大学のアドミッションポリシーも参考に

そうはいっても入試から知識・技能が必要なくなるわけではありません。知識・技能を活用しながら、思考力・判断力・表現力を問うような問題が重視されるようになるのです。また、各大学で行われる個別試験では、「主体性・多様性・協働性」といった、テストでは測りにくい能力も問われるようになります。これからますますグローバル化する社会の中で、課題を発見し解決していくためには、主体的に社会とかかわりながら、外国人を含めた多様な価値観を持つ人たちと協働することが求められるからです。そうした能力はペーパー試験では測りにくいですから、講義を聞いてのレポート作成、小論文、プレゼンテーションや集団討論、面接などで評価していくことになります。つまり、問われる能力自体も多様化・多元化しているのです。

だからといって、これらの力をすべて完璧に持ちあわせる人はいないでしょう。そこでぜひ参考にしてほしいのが、大学ごとにどういう力を持った人に来てほしいかを明確に示した「アドミッションポリシー」です。既に多くの大学でホームページなどに明示していますから、まだ先のことと言わず、気になる大学があればご覧になってみるとよいでしょう。数年後までに子どもがどのような力を身に付けるべきなのか、具体的にイメージすることができるはずです。



2024年(現小3)からは本格的に入試が変わる!?

今回の改革は、大学入試にとどまらず、小学校から高校の教育内容を含めて全体で進んでおり、小中高での教育内容を示した「学習指導要領」改訂の検討がされています。小中高で学習する内容自体が「思考力・判断力・表現力」を重視したものになるわけですから、当然、大学入試もその力を問う問題に変わっていくでしょう。具体的には、小学校で2020(平成32)年度、中学校では21(同33)年度、高校では22(同34)年度から新学習指導要領がスタートします。そのため、高校で3年間新学習指導要領で学んだ2024(平成36)年度(現小3)から、大学入試も本格的に変わっていくのではないかと予測されます。
とはいえ今の学習指導要領でも、「思考力・判断力・表現力」が軽視されているわけではありません。そのため、今後少しずつ、「知識・技能」を問う入試から、「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」を問う入試へ変わっていくという流れが進んでいくでしょう。

大学入試改革については、今なお議論の途中であり、ここで触れたタイミングは確定のものではありません。ですが、改革のタイミングがいつであれ、その方向性自体が変わるわけではありません。「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」が、今、そしてこれからの世の中で必要になることは間違いないからです。現小3は対策が必要で、小4だから不必要ということではなく、入試で問われるかどうかにかかわらず、こういった力を今から身に付けておくことが、これからの社会で活躍するすべての子どもたちにとって大切です。

【後編】では、次の大学入試改革で求められる「力」を伸ばす、小中学校でも広がりつつある新たな授業スタイル「アクティブ・ラーニング」についてお話しします。


プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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