多様化する大学入試 高校生の保護者が知っておくべき大学受験の「今」と関わり方【前編】‐木村治生‐

グローバル化や少子化の影響で、大学教育や大学入試が、今、大きな改革期に入っています。入試は多様化しており、推薦・AO入試やアラカルト入試など、さまざまな選抜方法を取り入れる大学が増えています。かつてとは異なり、多様な選択肢がある状況です。
そのようななかで、子どもの進路選択に保護者はどう関わっていけばよいのでしょうか。大学変革期における高校生の保護者のかたに向けて、子どもの受験と上手に関わるためのポイントを、ベネッセ教育総合研究所・高等教育研究室長の木村治生さんに伺いました。

保護者は子どもにとって重要な、進路の相談役

ベネッセ教育総合研究所では東京大学と共同で「子どもの生活と学び」研究プロジェクトを行っています。その一環で実施した「高校生活と進路に関する調査」(高校3年生対象、2015<平成27>年) で、「進路を決めるときに誰(何)の影響を受けたか」を尋ねたところ、最も「影響した」という回答が多かったのは「母親」(71.4%)でした。「父親」(48.9%)については、「高校の先生」(69.8%)よりは低い数値となっていますが、それでも半数近くは父親の意見やアドバイスが影響したと回答しています。いずれにせよ高校生にとって保護者はとても身近な存在であり、人生のモデルであり、保護者の対応が進路選択にとってとても大きな影響を持つということは変わりありません。

また、同調査では、進路選択を意識した時期についても質問しています。その回答には、高校時代の特徴がよく表れています。傾向としては、「文系向きか理系向きか」や「高校卒業後に就職するか進学するか」は中学生までに意識する割合が高いのですが、「どのような職業に就くか」は高校になってから考える割合のほうが高いという結果です。自分が社会の中でどのように活躍するかをイメージし、仕事との関わりの中で進学先や就職先を選ぶのが高校時代。とはいえ、多くの高校生は、職業に対するリアルな知識や大学に関する情報を十分に持っていないのも事実です。



限られた情報の中で、重要な進路選択をしなければならない高校生

そのため、多くの高校生が「自分の適性がわからない」「自分が就きたい職業がわからない」「進路選択の基準がわからない」など、自身の進路選択について大きな悩みを抱えています。社会についての知識がそれほど豊富にあるわけでもなく、接する大人も限られているなかで、人生を左右するような進路選択をしなければならないのは大きなプレッシャーです。さらに、中学校・高校までとは比にならないほど、高校卒業後の進路には多様な選択肢があります。その中から人生を左右する具体的な進路を選ばなければなりません。
そのような高校生に対して、保護者が果たすべき役割とは、一体どんなものでしょうか?



目標はあくまでも「自立」 進路は必ず子どもに決めさせて

子育てのゴールがどこかというのは難しい問題ですが、高校卒業の段階である程度自立して物事を考えられるようにすることが必要です。進路選択や大学選びは、乗り越えなければならない自立のプロセス。「子ども自身が決める」ことが大切です。
そういったなかで保護者が果たすべき役割は、子どもの「メタ認知」を高めることだと思います。「メタ認知」とは、今の自分にできることと目標との距離感をきちんと査定し、次に何をやるべきかを考える力。要するに、客観的に自己を捉える力です。人生の重要な岐路に立っていながらも、まだまだ視野が狭い高校生。そういう状況で、自分の状況を第三者の視点から考えたり、社会や職業についての多様な考え方を知ったりすることが、よりよい進路選択に有効です。進路を決めるのは子ども自身ですが、そのプロセスに保護者は関心を持って関わりたいものです。

【後編】では、大学入試の変化の概況や、今の入試で問われる力についてお話しします。


プロフィール


木村治生

東京大学社会科学研究所客員准教授(2014~17年)・客員教授(2021~22年)、追手門学院大学客員研究員(2018~21年)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~22年)。
これまで、文部科学省、経済産業省、総務省などからの委託研究に携わるとともに、文部科学省審議会委員、独立行政法人国立青少年教育振興機構事業選定委員、内閣府調査企画委員会委員、埼玉県草加市教育委員会専門部会委員などを務める。
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