コミュニティ・スクールで地域づくり・学習づくりへ‐渡辺敦司‐
地域住民などが学校の運営に参画する「コミュニティ・スクール」(学校運営協議会制度、CS)の在り方について、中央教育審議会の作業部会が審議のまとめを行いました。CSの改革は、これまでにも紹介してきたとおり、文部科学省の協力者会議と、政府の教育再生実行会議の提言を受けて、中教審が学校側・地域側の両面から検討してきたものです。特に注目されるのが、学校を核にした地域づくりと、地域と協力した学習づくりです。
以前の記事では、実行会議が「全ての学校」にCSを必置とするよう検討を求めたものの、その対象範囲に私学が入るかどうかなど、必ずしも明確ではなかったことを紹介しました。中教審で検討した結果、今回の審議まとめでは、関係者などからも意見を聴いたうえで、必置の実現は困難だと結論付けています。一方で、公立学校に関しては、学校が抱える課題を解決するためにも、「地域とともにある学校」へと転換することが必要であり、義務付けはしないものの、制度改正や促進策を講じることによって、引き続き全校をCS化することを目指すべきだとしています。
注目されるのは、地域における社会教育団体として「学校協働地域本部」(仮称)を設置して、学校をパートナーとした地域振興を提言していることです。同本部と似たような名称として、これまでにも「学校支援地域本部」がありますが、「学校・家庭・地域が一体となって地域ぐるみで子供を育てる体制を整える」のが主目的で、同じ社会教育団体といっても、名称のとおり、学校の教育を支援し、一緒に子どもの育成に携わろうという側面が強いものだといえます。これに対して「協働」本部のほうは、地域の教育力を充実するために学校に連携・協働を求めるという逆の方向です。両者が相まって機能した時、学校と地域は本当の意味でのイコールパートナーとなることでしょう。
保護者の方々も、お子さんの通う学校で、「総合的な学習の時間」を中心にして、地域の人から学ぶ学習が盛んに行われていることを実感していることと思います。既に学校は、地域の存在なしに、子どもに「生きる力」を付けさせる学習活動を進めることはできなくなっています。
一方、地域にとっても、活性化のためには、学校という存在が欠かせません。さらに、地域人材の育成という観点から、学校と積極的に連携していこうという動きが、各地で活発になっています。高校魅力化とセットで離島を振興していこうという、島根県海士(あま)町の取り組み(外部のPDFにリンク)は、あまりにも有名です。義務教育でも、高知市の中山間地域で活性化の好事例として全国的に注目を集める地域とともに、子どもに「21世紀型能力」を付けさせようとする小中一貫のCS「土佐山学舎」といった取り組みが始まっています。
グローバル人材の育成は、単に世界へ打って出るためとは限りません。グローバルな視点で地域(ローカル)の課題を考える「グローカル人材」が今後、ますます求められます。CSによる地域連携は、その大きな原動力となることでしょう。