第1志望校・併願校と中学受験の目的[中学受験]

選抜クラスを作り、生徒の学力を伸ばすためにハイレベルの指導を行うと、どんなに落ちこぼれを作らないように細心の注意を払って指導をしても、また、優れた人材ばかりを集めたつもりでも、必ず指導についてこられない生徒が出る。これは、単に選抜クラスだけではなく、東京大学でも、御三家といわれる中学校・高校でも起こる現象である。原因はいろいろあると思うが、一つには選抜試験で運よく合格したことが考えられる。

確かに、「試験は水物」と言われる。実力があっても合格不合格は時の運、出題される問題やその時の体調によっても得点はおおいに異なる。多くの生徒が合格ラインのプラスマイナス数点の範囲にいるので、合否は運に左右されるのである。しかし、学力が志望校よりも大幅に低いのを無理して受験し、運よく合格する生徒もいる。その場合は入学してから先生が適切に指導したとしても授業についていけないことがある。

多くの場合は、子どもは環境に適応していく。授業についていけるように努力するので、結果として子どもの成長に繋がる。親は子どもの成長を期待して、多少無理でも子どもの学力よりも高いレベルの学校に通わせたいと思うわけだが、周囲とあまりにも学力の差があると子どもを潰してしまうことにもなりかねないのである。

第1志望校を選定する時、受験直前で偏差値が大幅に高い学校は受験すべきではないと思う。不合格になる確率が高いばかりでなく、合格したとしても入学後に授業についていけなくなるリスクも高い。入学後のことも考え、受験直前の子どもの学力と同程度の学校を第1志望校とすべきであろう。
それでも合格できるかどうかはわからないのである。第1志望校が不合格になった場合に備え、合格する可能性の高い併願校を1校は受験してほしい。第1志望校と同レベルの併願校ばかりを受験したのでは、全滅してしまう可能性もある。

万一、受験生が第1志望校に不合格になったとしても、子どもが心に傷を負うことになってはならない。その後、併願校に進学したとしても、子どもが次の目標にチャレンジする気持ちを持ち続けられるよう保護者は心のケアを心がけてほしい。一つの目的に向かって努力することは、勉強するためには必要かもしれないが、第1志望校以外は受験の成果として認めないという家庭の風潮が強すぎると、子どもも同調する。
受験が競争である側面が強いせいか、スポーツの競技のように「（ここまでがんばってきたのだから）金メダル以外は欲しくない」という選手やトレーナーと同じような気持ちになるのであろうが、ここで大事なことは、中学受験の目的は「我が子に合った学校」に進学することで、第1志望校に合格することではない。併願校に進学しても、在籍校が「我が子に合った学校」と思えれば、中学受験の目的は達成されたのである。