いじめ、先生が気を付けるべき対応は?

いじめは絶対にしてはいけないことですが、簡単に根絶することができないのも現実です。学校側でも、何がいじめなのか、どうなったら「解消した」といえるのか、という判断すら迷う場合があります。そうしたなかで最近も、岩手県矢巾町の中学校で担任が生徒の兆候をつかみながら見過ごしてしまい、いじめ自殺に至ったという痛ましい事件が起きました。学校や先生には、どのような対応が求められるのでしょうか。

文部科学省は先頃、今年度初の「いじめ防止対策協議会」を開催しました。その席に、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事の小森美登里さんがヒアリングに呼ばれ、発表しました。小森さんは1998(平成10)年、高校に入学したばかりの一人娘をいじめ自殺で亡くしたことをきっかけに、いじめのない社会を目指して1,000回以上の講演を行うなどの活動を続けています。

小森さんが教員研修などで講演すると、先生方から「自分がしていたことが、どれほど子どもを追い詰めていたかがわかった」「間違った声かけをしていた」「加害者の背景を考えることを知った」という感想が聞かれるといいます。教員免許の取得には大学で児童・青年心理の勉強が必要ですし、学校でも日々子どもたちと接しているはずですが、いじめに対する「感度」(協議会での委員の発言)が働かない場合があることも、残念ながら事実です。小森さんによると、そこには「いじめがあったら気付かないはずがない」「中学校では9教科の先生がいて、誰も気付かないということはありえない」という思い込みがあったり、いじめの兆候をつかんでいても一人で抱え込んでしまったりすることが背景にあるといいます。2013(平成25)年に成立した「いじめ防止対策推進法」に基づき、各学校には対策組織が置かれているはずですが、組織があっても、活用されなければ何にもなりません。

先生がいじめの有無を判断するのに慎重で、しばらく様子を見ている間に、いじめられている生徒は「誰も動いてくれない」「助けてくれない」と孤立感を深める現実もあるといいます。「いじめられる側にも問題がある」と考えてしまう場合も少なくありませんが、小森さんは「そうした先生に、子どもは二度と相談しなくなります」と注意を促すとともに、「いじめは虐待行為であり、学校で起きると『いじめ』と呼ばれるだけ。『虐待される子にも原因がある』とは言いません」と指摘しました。
いじめた子への対応も不可欠です。同NPOが2012~13(平成24~25)年に小・中・高校で行ったアンケート調査によると、どの校種でも、いじめをした子の7割が「自分もつらかったことがある」と回答しています。家庭や教室でのつらさを、ほかの子へのいじめという形で発散させているというわけです。再びいじめをさせないためには、加害児童生徒の心情に寄り添った対応も不可欠です。

同協議会では今後、教員研修の在り方などを検討します。学校の組織的な対応はもとより、具体的なケースをもとに先生一人ひとりの「感度」を高め、いじめをエスカレートさせない態勢づくりが、全国的に求められます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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