「基礎学力テスト」、大学入試に使えるのは今の小3から!?
大学入試の改革をはじめとした「高大接続改革」をめぐり、文部科学省の高大接続システム改革会議が中間まとめを行いました。焦点だった2つの新テストのうち、2019(平成31)年度の創設を予定する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は、現行の学習指導要領下(22<同34>年度まで)を「試行実施期」と位置付け、その結果を大学入学者選抜や就職には原則として用いない方針が示されています。
この方針どおりで行くと、入試などに活用できるのは、今年度の小学3年生が高校2年生になって同テストを受ける2023(平成35)年度からということになります。なぜ、このような方針になったのでしょうか。過去の経緯も振り返りながら、考えてみましょう。
基礎学力テストの主な目的は、中間まとめにもあるとおり、高校生の学習意欲を喚起し、学習の改善を図るとともに、学校の指導改善にも生かすことで、高校教育の質の確保・向上を図ることです。小中学校で実施されている全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)と、ほぼ同じ狙いだと思って間違いはないでしょう。そのもとになった中央教育審議会の高等学校教育部会では当初、小中学校と同様、原則として高校生全員を対象とする「悉皆(しっかい)調査」にする案が文科省事務局から示されたのですが、テスト結果が高校長の卒業認定権を制限しかねないことや、専門高校などには各種検定試験など質保証の仕組みが既にあることなどを理由に、高校関係者を中心とした委員から反対意見が相次いだため、「希望参加型」に落ち着きました。
ただし同部会でも、高校教育全体の質保証策という点から考えると「できるだけ多くの高校生が受けられるようにした方がよい」という意見も強く出されていました。システム会議の中間まとめでも、テストの内容は、高校生の大半を占める「平均的な学力層」以下を主な対象として出題するとともに、「学校単位での参加を基本としつつ、生徒個人の希望に応じた受検も可能とする」としました。学校単位で受検する場合、正規の教育課程の一環に組み込むことさえ認めています。
その「副次的な活用方法」として、推薦・AO入試などで基礎学力を把握する手段として、入試にも活用できる道を開いたことは、昨年12月の中教審答申と変わりません。ただし、現行の指導要領下では国語・数学・英語の3教科に絞るとともに、「試行実施期」と位置付けて入試などへの活用を控えるという点で、答申との違いがあります。背景には、新テストの開発が遅れ、導入当初には入試などに活用できるほど信頼性のあるテストができない可能性が出てきたという事情があるものと見られます。
大学入試センター試験に代わるもう一つの新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、既に紹介したとおり、基礎学力テストの状況も見ながら、現行指導要領と次期指導要領でバージョンアップさせながら導入したい考えです。しかし、基礎学力テスト自体が導入前からつまずいた格好になるなか、さらに出題が難しいと見られる学力評価テストの動向が今後どうなるかについても、ますます目が離せなくなったと言ってよいでしょう。