「忙しい」教員、保護者・地域への対応に強い負担感

国際的な比較調査でも日本の教員の多忙さが際立っていることは、当コーナーでも紹介してきました。ただ、一口に多忙といってもその内容や質は異なります。一体、日本の教員は、どんな業務を負担と感じているのでしょうか。文部科学省の「学校現場における教職員の業務実態調査」の結果によると、公立小中学校の教員が最も負担感を持っているのは、「国や教委からの調査・アンケートへの対応」と「保護者・地域からの要望・苦情の対応」であることがわかりました。

調査は2014(平成26)年11月、全国の公立小中学校451校を対象に実施し、9,848人の教職員から回答を得ました。調査の大きなポイントは、業務に対する教員の負担感率(「負担である」と「どちらかと言えば負担である」の合計)を明らかにしていることです。人間は多忙でも、やりがいや楽しさを感じていれば負担感は低く、逆に避けたい仕事と感じていれば負担感は高まるものです。
実際に調査結果を見ると、教員本来の仕事である「教材研究、教材作成、授業(実験・学習)の準備」に対する教員の負担感率は小中学校が各21. 0%、「朝学習、朝読書の指導、放課後学習の指導」は小学校が21.7%、中学校が24.3%などにとどまり、これらに負担を感じている教員は少ないようです。

半数以上の一般教員が従事している業務のうち、負担感率が高かったのは、(1)国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応(小87.6%、中86.4%)、(2)研修会や教育研究の事前レポートや報告書の作成(小72.9%、中71.5%)、(3)保護者・地域からの要望・苦情等への対応(小71.4%、中71.1%)、(4)児童・生徒、保護者アンケートの実施・集計(小69.3%、中67.2%)などでした。
一方、半数以上の教頭・副校長が従事する業務で負担感率が高いのは、(1)国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応(小83.7%、中84.7%)、(2)給食費の集金、支払、未納者への対応(小64.2%、中64.3%)、(3)学校徴収金に関する業務(未納者への対応)(小60.8%、中65.5%)、(4)保護者・地域からの要望・苦情等への対応(小60.5%、中63.5%)などとなっています。教頭・副校長と一般教員の負担感率がいずれも50%を超えた業務は、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」と「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」の2項目でした。

文科省は、教員の多忙化解消のため各種の専門家を学校業務に参画させる「チーム学校」などの在り方を検討しています。ただ、保護者などの立場から見れば、教員が保護者対応に強い負担を感じているというのは、何となく納得がいかない面もあるでしょう。これについて文科省は、学校へのアンケート調査削減などの業務改善方策を示したガイドラインの中で、学校と保護者の信頼関係の構築のため、学校からの積極的な情報発信、教員と保護者のコミュニケーションの充実を強調しています。

保護者対応などへの教員の負担感軽減で最も有効なことは、学校・教員と保護者・地域住民が円滑なコミュニケーションを取ることであると言えるのではないでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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