小中一貫教育に「コミュニティ・スクール」活用 保護者・地域の参画期待

小中一貫教育を行う「義務教育学校」を、2016(平成28)年度から市町村などの判断で創設することが、学校教育法の改正で可能になりました。主な内容については当コーナーでも紹介しましたが、さらに注目されそうなのが、保護者や地域住民が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」(CS)との関係です。というのも文部科学省は、義務教育学校でCSの活用を求めているからです。

文科省の調べによると、小中一貫教育は現在、全国1,743市区町村で1,130件(2014<平成26>年5月現在)あります。義務教育学校が制度化される2016(平成28)年度からは、さらに多くの小中一貫教育校が出現することは確実でしょう。
懸念されるのは、義務教育学校が、安易な学校統廃合に利用されることです。学校統廃合を進めるため、反対する地域住民や保護者などに対して、「代わりに小中一貫教育の学校をつくります」と説得することも予想されます。このため文科省は、学校教育法改正の通知の中で、義務教育学校が「学校統廃合の促進を目的とするものではない」とクギを刺しています。

一方で通知は、義務教育学校の創設に当たり、「地域住民や保護者とビジョンを共有し、理解と協力を得ながら進めて行くことが重要である」と強調し、地域住民や保護者が学校運営に参画する「コミュニティ・スクールの推進が期待される」としています。義務教育学校を設置する場合、CSにするよう実質的に要請しているとも受け取れます。

なぜ、義務教育学校をCSにする必要があるのでしょうか。背景には、東日本大震災で多くの学校が避難所となり、地域の人々を支えたことで、学校と地域の関係が見直されるようになったこと、さらに、人口減少など多くの地方が課題を抱えるなかで「地域の中核としての学校」の存在が、クローズアップされるようになったということが挙げられます。
義務教育学校を設置するなら、実際問題として、複数の小学校が統廃合されることは避けられない地域もあるでしょう。そうなると地域の中心であった学校がなくなり、地域の衰退につながる可能性も出てきます。このため義務教育学校をCSにして、「学校の応援団」として積極的に学校に関わるよう、地域住民や保護者を促すことで、学校を中心とする新たな地域づくりを進めようというのが、文科省の狙いであると思われます。ある意味、「学校統廃合」「小中一貫教育」「コミュニティ・スクール」の3つのキーワードは、これからセットで考えていく必要がありそうです。

いずれにしろ、9年間の小中一貫教育では、さまざまな場面で今まで以上に、地域住民や保護者の協力が必要になるのは間違いないでしょう。より積極的な学校の教育活動への協力や学校運営への支援が、保護者などに求められる可能性があります。小中一貫教育では、学校・保護者・地域住民の関係が改めて問われることになるかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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