ゲームに夢中=集中力がある。勉強に集中させるために親がすべきこととは?坪田信貴さんに聞きました

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子どもに向かってつい言いがちで、しかも効果が感じられないことば「集中しなさい」。お悩みのかたも多いでしょう。「ビリギャル」を慶応大学に導いたことで有名な坪田信貴先生の新刊「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」の中では、子どもに集中させたければ環境を整えることが大事であると書かれています。今回は、もう一歩踏み込んで、どうしたら子どもが物事に集中できるようになるかを伺いました。

この記事のポイント

目の前に置くのは、そのときに必要なものだけにする

——「集中しなさい」と言う前にその場を片づけることが大事、ということはよくわかります。でも、狭い住宅事情などで子ども部屋が確保できず、片づけが難しい場合もあって……、どうしたらいいのでしょうか。

坪田信貴先生(以下、坪田) 子どもは、テーブルの上にいろいろなものがのっているような状況では集中できないものです。勉強しようと思っても、ペンが10本あったらどれを使おうかと迷うことになりますよね。集中するためには、その瞬間にすべきことに必要なものだけを目の前に置くことが肝心です

片づけがうまくできない場合もある、という事情もわかりますが、その場合は部屋全体を片づけなくてもいいのです。勉強する机や、テーブルでもこたつでもいいですが、自分のワークスペースさえ片づいていればいい、ということなんです。

もし、それすらも片づけられないのならば、そこでは集中できないということです。気が散りそうなものがたくさん出しっぱなしになっている状態にあっても「集中しなさい」と言うのは矛盾しています。少なくともワークスペースはその瞬間だけでも片づけて、不要なものは見えない場所に置くことが必要です。

ゲームなら集中するのは、成長するのが好きだから

——ゲームなら何時間でも集中するのに、勉強はすぐ気が散るということもよくあります。その場合、ゲームを隠すという選択肢がよくあがりますが、親ができることはどんなことでしょうか。

坪田 この場合は、ゲームを隠すのは親がすることではないですね。子ども自身が自ら選択して片づけることが大事でしょう。

ゲームがとても好き、ということは、その子は成長するのが好きだということでもあります。たとえば、シューティングゲームでハイスコアを目指したり、もっと難しいステージをねらったりすることは、まさに「成長したい」という気持ちから起こります。今より上達したい、今より結果を残したいと思っているのですから。すぐにゲームオーバーになってしまう、ステージがまったく変わらない、そんなゲームはすぐに飽きられるし、誰もやらないでしょう。

——勉強でも、ゲームのときのように成長を楽しむようになってほしいんですが……。

坪田 ゲームと勉強の違いを考えてみましょうか。ゲームの場合は成功すると、ファンファーレが鳴ってハイスコアが出るし、このモンスターを倒したら何点ゲットと、がんばった結果がハッキリすぐにわかります。一方、勉強にはフィードバックがすごく少ないです。問題を10解いたら賢さポイントが10増えるとか、10ページ進んだらレベルが3上がるといった指標がありません。あるとしたら、約3カ月に1回の定期テストがあり、3カ月分勉強したことを何パーセント理解したかが点数としてわかるのみ。さらに親や先生からは、間違ったところや理解していないところばかりを指摘されるのです。

これがもしゲームだったら、できないことや弱点ばかりを指摘され、うまくできていることがあってもそれが知らされるのは3カ月後。そんなゲーム誰がやりますか? 誰も夢中になってやることはありませんよね。

勉強もゲームのように楽しんで集中できるために大事なことは?

——では、勉強もフィードバックがたくさんあれば集中するようになりますか?

坪田 そうです。勉強しているときに、うまくできた点をどんどんフィードバックしてあげましょう。そのフィードバックはどんなことでもかまいません。問題を解き始める以前の、たとえば背筋がまっすぐ伸びているとか、鉛筆をちゃんと持てたとか、それこそ机を片づけられたということでもいいです。勉強そのものでないところから始めてかまいません。そして、こんな問題が解けたんだね、と認めてほめていきます。

これは毎日ずっとやる必要はありません。特に学習を始めた初期の段階にすることが大事です。だからといって、小学校の高学年になってしまったから、今から始めても意味がない、というわけではありません。フィードバックしようと決めた瞬間から、その子が取り組んでいることへのフィードバックを、そのときどきにしてあげてください。すると、子どもは言われたことのパターンを覚えて、自分でフィードバックできるようになっていきます。それがむしろ重要です。

目の前のことでなく、少し先のことを考えて集中するためには

——それでは、たとえば高校受験など、少し先の将来を見据えたうえで、今集中して勉強することの大切さをわかってもらうには、どんな声かけがいいでしょうか。

坪田 ポイントとしては、子どもの趣味に合わせて、集中することの大切さを伝えることです。スポーツが好きな子なら、好きな選手の好プレーのエピソードや、好きな漫画の主人公を例にとって、「あのときに全力で集中していたから、その先の未来の問題解決につながったんだよ」といった具合に伝えるのです。親から見れば、今がんばれば希望する高校はどこでも行ける! と言いたくなるかもしれませんが、その高校に入ることにどういう魅力があるのか子どもがわかっていなければ、まったくピンとこない話になるでしょう。

親の目線からのたとえ話をしても、子どもにはまったく通じません。そこは親が、子どもは何に興味があるのか、好きなのかを研究する必要があるということなのです。

まとめ & 実践 TIPS

ゲームなら言わなくても集中するのに、勉強には何を言っても集中しないのは、その子をほめるフィードバックが足りないから、ということがわかってきました。さらに、少し未来まで見据えて、集中することが大事と伝えたいときは、今、自分の子どもがどんなことに興味があるかを知っていることがポイントになります。
次回は、「学校に行きたくない」と子どもが言った時の声かけについて伺います。

「人に迷惑をかけるな」「親の言うことを聞きなさい」と言うのはNG!?坪田先生に聞くその理由はこちらから

坪田信貴先生の最新刊、「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)では、子どもに向けてつい言ってしまうひとことを、視点の違うことばに変えるだけで親子関係も変わってくる、そんな声かけのポイントを解説している1冊です。

プロフィール


坪田 信貴

坪田塾塾長。心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちを「子別指導」し、偏差値を上げてきた。起業家としての顔を持ち、人材育成、マネージャー研修なども行う。テレビ、ラジオ、講演会で活躍中。著書に「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学現役合格した話」(KADOKAWA)など多数。最新刊は10月に発行された「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」(SBクリエイティブ)。

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