「考え、議論する道徳」の授業と教科書はどうなる

小中学校で行われている「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」(道徳科)に格上げする準備が、着々と進んでいます。学習指導要領の一部改正は3月に行われており、7月には指導要領の趣旨を詳しく説明した「解説」と、道徳の教科書の検定に関する審議会報告が、相次いで出されました。パブリックコメント(意見公募手続)を経て9月にも教科書検定基準が改正され、小学校は2018(平成30)年度から、中学校は19(同31)年度から、検定教科書を使った道徳科の授業が正式に始まることになります。

道徳の授業というと、これまでは授業自体が低調だったり、きちんと授業が行われていても読み物教材が中心だったため「読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導」(指導要領解説)にとどまったりしていて、児童生徒の道徳性が本当に育っていないのではないかという指摘がありました。そこで今回の改訂では、内容の見直しはもとより、問題解決学習や体験学習なども取り入れながら「考え、議論する道徳(外部のPDFにリンク)」への転換を図ることにしました。「特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にある」(指導要領改正のもとになった中央教育審議会の答申)ことに注意しておく必要があります。

新しい道徳科では、「善悪の判断、自律、自由と責任」「向上心、個性の伸長」「思いやり、感謝」「友情、信頼」「公正、公平、社会正義」「生命の尊さ」といったキーワード(小学校と中学校で異なる)をもとに、グループで話し合ったり、書く活動で考えを深めたりしながら、内容を学ぶことになります。さらに、どの教科書にも「生命の尊厳、社会参画(中学校)、自然、伝統と文化、先人の伝記、スポーツ、情報化への対応等の現代的な課題など」の題材が取り上げられます。また、教科書会社には、国際理解や国際協調の視点から、現代的な課題の題材を選ぶよう求めています。

学習指導要領の全面改訂や、高大接続改革の論議では、「何を知っているか」だけでなく「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」の資質・能力にまで引き上げることを目指しています。さらに、幼稚園から大学までを通じて「知識・技能」はもとより「思考力・判断力・表現力」を育み、「主体的に学習に取り組む態度」(特に高校・大学では「主体性・多様性・協働性」)をバランスよく育成するとしています。そのためにも、課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」を、採り入れることにしているのです。「考え、議論する道徳科」も、こうした流れに沿ったものです。

道徳教育自体は、今までと同様「学校の教育活動全体を通じて行うもの」(指導要領総則)であり、道徳科は各教科などで行われる道徳教育の「要」の時間として位置付けられています。「考え、議論する道徳」への転換は、「何を知っているか」から「何ができるようになるか」の重視へとシフトする学校教育全体の先駆けともいえるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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