こんなにあったゲームのいいところ
ゲームなんてやめて勉強しなさい。ゲームなんてなんの役にも立たないんだから…。お父さん、お母さんからそう言われ、言い返せずに悔しい思いをしてきた人も多いはず。そんなあなたに朗報です。実は、ゲームにもステキな効果があったんです。それも爽快感あふれるファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)に。
ゲームで目が良くなるの!?
ゲームをし過ぎると視力が落ちる、と長い間言われてきましたが、必ずしもそうとは言えません。最新の研究によれば、一週間に何時間もFPSをプレイするゲーマーと、まったくしない人たちで視力測定をしてみると、驚くべきことにゲーマーのほうが圧倒的に視力がよかったのです。小さな文字を虫眼鏡を使わなくても読める「雑多なものの中で細部を見分ける力」と霧の中でも前にあるものがしっかり認識できる「灰色の濃淡を見分ける力」という2つの点が特に優れていました。
集中力と注意力まで高まるってホント!?
ゲームは集中力を弱め、注意力を散漫にする、なんて話もよく聞きますが、これも間違いです。まず、集中力は矛盾を解決する速さで決めることができます。文字の色と文字の意味を違うものにして、目にする情報を干渉させるストループ効果を使ったテストを行ったところ、ゲーマーの方が矛盾を解決して答えを出す速度が早かったのです。
また、注意力は周囲の状況をどれだけ把握できるかで測ることができます。通常は一度に注目できるものは3~4個にすぎないのですが、ゲーマーは6~7個を一度に注意を向けて処理できることが別のテストでわかりました。
FPSをプレイすると目が良くなって、集中力と注意力まで上がる…。にわかには信じがたい話ですが、なぜこんなにいいことがあるのでしょうか?
脳を活性化すると言われるFPS
その答えは脳への影響にあります。ゲーマーの脳には注意力を司るネットワークに大幅な変化がありました。注意力の向きを制御する頭頂葉皮質、注意力を維持する前頭葉、注意力を制御・矛盾を解決する前帯状皮質の3つすべてのネットワーク効率が良くなるため、ゲーマーは優れた能力をもつようになるのです。
もっとも、同じFPSでもゲームによって与える影響は変わるといいます。正確には、まだゲームのどのような要素が脳に良い影響を与えるかはわかっていないのです。
また、ゲームで遊んでばかり、というのも決してよくありません。バランスの良い食事は身体にいい影響を与えますが、偏った食事は身体によくありません。ゲームも同じこと。脳の一部しか使わないことになってしまいます。適度に勉強し、適度に遊んで“脳”力を上げていきましょう!
いい部分だけ伝えて、ゲームをやる言い訳にしてはダメですよ。
柏井カフカ
サイエンスライター。
博士号取得後、「科学を世に広めることで、専門家に頼りきりにならない社会を作りたい」と考え、さまざまな記事を手がける。記事のジャンルは専門分野の物理のほか、最新の科学・医療トピックや、IT技術の紹介など多数。
参考:
Enhancing the contrast sensitivity function through action video game training
Nature Neuroscience 12, 549 - 551 (2009), Renjie Li, Uri Polat, Walter Makous & Daphne Bavelier
TEDTalks 脳とビデオゲーム: Daphne Bavelier