海外留学支援さらに利用しやすく 4期目の「トビタテ留学」

文部科学省は、東京五輪・パラリンピックが開催される2020(平成32)年度までに海外への留学者を現行の2倍の大学生12万人、高校生6万人に増やす方針を掲げ、官民協働プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を2014(平成26)年度からスタートさせました。現在は、来年度前期に当たる第4期(大学生)の留学希望者を募集中です(7月1日~10月30日)。第4期募集では短期留学も支援対象に加えるなど、より応募しやすくなっています。

海外留学支援さらに利用しやすく 4期目の「トビタテ留学」


同プログラムは、企業などから寄付金を募り、政府予算と合わせて海外留学者に奨学金、海外大学などの授業料、渡航費などを支給するというもので、寄付金を出す支援企業は現在148社・団体に上っています。また、単に海外の大学で学ぶだけでなく、学生自身が企画した就業体験や、ボランティア活動などを含めた多様な留学計画も支援対象にしているほか、海外留学に対して産業界のニーズが反映できるようになっているのも特徴の一つです。

現在募集中の来年度前期の第4期では、ライフサイエンスなど「理系、複合・融合系人材コース」(220人)、今後の経済成長が見込める国々への「新興国コース」(80人)、世界大学ランキング100位以内の大学などで学ぶ「世界トップレベル大学等コース」(100人)、スポーツや芸術など「多様性人材コース」(100人)の4コース計500人が予定されています。このほか、別枠で地方自治体と地元経済界が協力して地域貢献できる人材を育てる「地域人材コース」があり、2015(平成27)年度から栃木県など7県の事業が採択されています。

第4期募集の改正内容を見ると、これまでは海外留学期間は「3か月以上推奨」として実質的に長期留学を求めていたのに対して、新たに「海外初チャレンジ応援枠」を設けて、「28日以上」であれば短期留学も支援対象に加えることにしました。海外留学経験がない学生なども応募しやすくすることが狙いで、募集定員全体の1割程度を、この応援枠に充てることにしています。

また、同プログラムは日本学生支援機構の奨学金制度を利用するため、実質的に同機構の第二種奨学金(利子付)が受けられる家庭に限られるという制限があり、年収の高い家庭の学生は対象外となっていました。このため、多様な人材を募集するという観点から、定員の1割程度は所得制限を超える家庭の学生も支援対象とすることにしました。
第3期の募集では、応募者1,290人中404人が採用されていますが、短期留学なども対象になったことで、第4期はさらに応募者が増えることが予想されます。
このほか、高校生対象のコースも2015(平成27)年度から始まっており、第1期として応募514人(国立49人、公立273人、私立192人)のうち303人(国立37人、公立162人、私立104人)が合格し、今夏から海外留学することになっています。

グローバル化の進展とともに、海外留学を希望する子どもや保護者は今後、増えることでしょう。しかし経済的負担を伴うため、ためらう子どもや保護者も少なくないと思われます。文科省がこのような支援事業を実施していることを、知っておくことも大切でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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