子どもの安全力を高める【後編】親子で練習するポイント

子どもの行動範囲が広くなっていくと、保護者や地域が見守るのと同時に、子ども自身の安全力を高めることも大切です。では、具体的にどうすればよいのでしょうか。「うさぎママのパトロール教室」主催の武田信彦さんに伺いました。



小さなピンチから練習していく

安全力には、危険なことに遭わないように気を付ける予防力と、万が一の時に自分の身を守るための対処力があります。予防力は、周りをよく見て、よく聞いて、危険かどうかを察知するとともに、スキを生まない力となります。対処力は、危険から「逃げる」、ピンチを「伝える」ための力です。

安全力を高めるために、小さなピンチから練習していきましょう。まず町の人に会ったら、元気よくあいさつをしてみてください。普段から声を出すことで、いざという時に「助けて」と声を出すための練習になります。また、いつもあいさつをしていれば、お互いに顔を覚えます。ピンチに遭った時、顔見知りであれば、「おじさん」「おばさん」と声を出しやすくなります。

「一人の時、こんな場合にどうするか」と、お子さまにクイズを出すのも、安全力アップにつながります。あらかじめ考えておけば、とっさの行動につながりやすくなるからです。たとえば、「おなかが痛くなったらどうする?」。通学路やいつも遊ぶ公園の近くに、児童館や図書館、通っていた幼稚園、病院など、管理する人や見守ってくれる人がすぐそばにいて、ひと声かけて使うことができる、安全なトイレはあるでしょうか。そうした場所は、危険な場面に遭遇した時に駆け込む先にもなります。「何かに遭(あ)った時は、ここに逃げ込むのよ」と子どもに声を掛け、事前に職員のかたにもお願いをしておくとよいと思います。

同じように、「知らない人に道を聞かれた時」「お菓子をあげると言われた時」など、親子で一緒に考えてみましょう。お菓子をもらう時も、知らない人ならきっぱり断れても、知っている人では相手に悪いなと思って、断りにくいものです。
また、駐輪場に自転車を置く時、家の鍵を開ける時など、一人になりやすい場面では、親子でいる時でも、周りに注意を払うように促しましょう。習慣付けておけば、もし一人になっても、予防力になります。

どんな状況も、相手によって、場所によって、対応は異なるものです。どんな対応が正解かはありません。ですから、子どもの引き出しを増やしておき、いざという時に子どもが自分で考えて、対応できるようにしておく。それが予防力であり、対処力なのです。



「できません」ときっぱり断る練習を

知らない人と出会った時、もし何かあってもつかまらずに逃げられる、自分を守る空間として相手との距離を保つことが重要です。話をしても失礼にならない程度で、でも手が届かない最低限の距離は、約1メートルほどです。新聞の長いほうを底辺にして丸めた棒を2人で挟んで持つと練習できます。その感覚をつかみながら、知らない人に声をかけられた時の問答を練習してみましょう。

断る力も大切です。優しい言葉でお願いをされたり、お菓子をあげると言われたりしたら、迷ってしまうかもしれません。でも、少しでも怪しいと思ったら、勇気を出して断るようにお子さまに伝えましょう。
その時に、「できません」と言葉を統一しておくのがおすすめです。理由を付けて断ろうとして、まごまごしているうちに付いていかざるを得なくなったというケースがあります。思い出しやすく、相手に失礼にならない「できません」が最適です。日常生活では断る場面はほとんどないので、想定問答の中で「できません」と言う練習をしておくのがおすすめです。

子どもの遊びの中には、声を出したり、瞬時に逃げたりと、安全力を高める要素がたくさん含まれています。その代表格が「だるまさんがころんだ」です。周りをよく観察する、周りの音をよく聞く、気配を感じる、相手との距離を取る。まさに一人になった時に必要な力です。ほかにも、おにごっこやハンカチ落としなどの遊び、体を俊敏に動かし声を出すスポーツ(野球やサッカー、バスケットボールなど)も、危険に対応するために役立ちます。そのことをお子さまに気付かせてあげてください。

防犯ブザーを持たせているご家庭も多いと思います。防犯ブザーは身を守るために持ち歩ける唯一の道具といえます。できれば複数持ち、外出時に付け替えなくても済むようにし、必ず持って出かけられるようにしましょう。月1回の点検も忘れないでください。電池切れだったケースや初期不良だったケースもあります。時々、お子さまが鳴らす練習をしたほうがよいでしょう。

小さな子どもは弱い存在ではありますが、幼稚園児や小学生でも、その年齢ごとに身を守る力を持っています。その力に子ども自身が気付いていれば、いざという時に身を守る行動力となります。その力を引き出すのは、保護者のかた次第です。日頃から注意を促したり、ピンチの時の対応を練習したりして、お子さまの安全力を高めていきましょう。


プロフィール


武田信彦

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター
国際的な犯罪防止NPOを経て「市民防犯」を提唱する講師として活動中。全国の自治体、警察、教育現場などから多数の講師依頼を受けている。また、中央省庁においても助言を務めるなど市民防犯のパイオニアとして活躍中。著書に「活かそうコミュ力!中高生からの防犯」(ぺりかん社)、「SELFE DEFENCE 『逃げるが勝ち』が身を守る」(講談社)など。

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