青山学院大学 教育人間科学部 心理学科(2) 探究するおもしろさに出合うと学びはもっと深まる[大学研究室訪問]

日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。音と心の関係を科学的に探究されている青山学院大学教育人間科学部心理学科の重野純先生の研究室です。学生への指導にも影響している先生自身の研究者人生や、高校生までにすべきことなどについて伺いました。



■探究するおもしろさに出合い研究者の道を志す

私は、大学に入学した当初から心理学に興味があったわけではありませんでした。進学した東京大学には、1・2年生の前期課程は全員が教養を学び、3・4年生の後期課程に入る前に、専門学部・学科を選ぶ、進学振り分け制度があります。私は文科III類に所属していたので、大好きな英語を専攻しようと思っていたのですが、友人の間で「心理学」の評判がよいのに心を動かされ、なんとなく心理学を希望してしまったのです。
しかし、心理学で何を学びたいか、真剣に考えたこともありませんでしたので、すごく後悔し、学科の教授に「違う科に行きたい」と相談したこともありました。そんな私が、心理学を続けてきたのは、自分の好きな「音」に関わる研究をし始めて、探求するおもしろさに出合ったからです。


心理学科には防音室があり、実験はこの部屋で行われることが多い。

学部の卒論で「聴覚」に関わる研究に取り組み始め、その学びを深めようと大学院に進んだのですが、当時は知覚心理学の分野では、聴覚の研究はマイナーで、学びたい分野の授業は自分の学部にはありませんでした。そこで、他学部の授業をすべて調べ、音という字の付いた授業を探すことに。見つけたのは、医学部の「音声生理学」や「実験音声学」という授業でした。そこで、音声生理や音声工学などの基本的なことを学び、音声知覚の研究を始めたのです。その後、医学部でも授業をしていた工学部の先生に指導をしていただくようになり修士論文を書きました。未開拓の分野だったこともあり、大学院での学びは自ら道を開いていかねばなりませんでしたが、私にとってはそれがとてもおもしろく感じられました。
また、心理学のおもしろさは、空気のように日常生活で当たり前と思っていることを実験によって明らかにすることができるところにあります。最初の頃は、何を研究すればよいのだろう……と迷うことも多かったのですが、研究を重ねていくうちに認知心理学の中でも聴覚の分野はまだまだわからないことがたくさんあり、研究したいことが山のように出てきました。



■自分の趣味を研究テーマに

私のモットーは、「楽しく研究する」ということです。研究を続けるのは、楽しいことばかりではなく、同じくらい苦しいことが待っています。だからこそ、楽しみがなければ続けられないと思います。
私のゼミでは、研究テーマを決められずに困っている学生がいたら、まず趣味を聞くことから始めるようにしています。料理が趣味だったら自分の作ったお菓子を使って、ドラムが趣味ならドラムをテーマにして研究してみれば、とアドバイスをします。私もそうでしたが、自分の興味のあることなら前向きに取り組めますし、学びがどんどん深まるように感じています。
ただ、最近の学生さんは研究テーマが決まっても、自ら学びを進めていくのが少し苦手だなと感じています。そこで、ゼミでは翌週までの課題を与えておいて、徐々に研究が形になるようにサポートしています。しかし、一から十までお膳立てするわけではなく、学生が自分で考えながら取り組めるように、自主性が育つような指導を心がけています。



■高校時代に身に付けたいこと

心理学に限らず大学での学びは、教員の講義や教科書の内容を正しく理解することにとどまりません。むしろ、自らが考え、判断する力を養うことが大切です。自主的に学んでいく姿勢が求められます。高校生のうちに、周囲の人に流されず自分の意見を持てるようになってほしいですね。ぜひ、保護者のかたにも、自分で考える習慣を付けるようにサポートしていただきたいと思います。

そして、研究を続けていくには、コツコツがんばることがなによりも重要です。要領よくできる学生よりも、寄り道をしても、努力を惜しまず研究に没頭できる学生のほうが、最終的にはよい成果に結び付くことが多いと感じています。大学に入学するまでに、なんでもよいですので、ひとつのことに打ち込む経験をしてほしいと思います。

また、大学での学びを支える基礎学力もしっかり身に付けておいてほしいですね。特に重要なのは英語力です。学術論文を書くには、自分の研究テーマに関わる国内外の先行研究から学ぶ必要があるからです。英語によるコミュニケーション力を磨くことはもちろん大切ですが、読解に必要な文法力をしっかりと身に付けておきましょう。



■進路に迷ったら心理学を

人間が関わることすべてが「心理学」の学びにつながります。社会の中における意識や行動についての研究をする「社会心理学」、スポーツを心理学的に研究する「スポーツ心理学」など、一見関係なさそうなジャンルでも「心理学」につながっています。ですから、進路に迷われたら「心理学」を選択するとよいと思います。ゼミの卒業生は、臨床心理士をめざして大学院に進む学生もいますが、メーカー、マスコミ、公務員などさまざまな道に進んでいます。どの道に進んでも、心理学で学んだ「人の心のメカニズム」はきっと役立つはずです。

私の所属する青山学院大学のオープンキャンパスでは、模擬実験に参加したり、心理学科の教員による個別相談も受けられたりするので、興味のある方はぜひ見に来てほしいと思います。


プロフィール


重野 純

東京都生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得。文学博士。現在、青山学院大学教育人間科学部教授。主な専門領域は、認知心理学、心理言語学、音楽心理学。主な編著書に『キーワードコレクション心理学 改訂版』、『言語とこころ』(新曜社)などがある。

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