不登校の原因「いじめ」が低学年化している現代、子どもを救う「根拠のない自信」をつけるには【不登校とのつきあい方(26)】

今、不登校の大きな原因となる「いじめ」が低学年化しています。しかも、一見して「わかりづらい」コミュニケーション操作系のいじめが主流です。それは子どもたちが「空気を読む力」をつけた結果だろうということもわかってきました。(前編:不登校の原因、「いじめ」が小学生で低学年化する理由)では、そんな子どもたちを救うためにはどうしたら? 「不登校新聞」編集長の石井志昂さんに伺います。

この記事のポイント

早期教育の過熱によって、子どもらしく過ごす時間が削られている

子どもたちが「空気を読む力」を身につけるようになった背景に、早期教育があるのではないかと、私は考えています。早期教育がもたらす良い面の陰で、子どもが子どもらしくいられる時間が削られているのではないか。幼いころから勉強勉強と攻め立てられる環境にある子どもが増えていると感じています。

不登校を経験した10代後半の人たちに、不登校になったとき何に不安を感じていたかと聞くと、多くの人が「勉強に追いつけなくなる不安」と言います。勉強について恐怖感に包まれるような発言をする人がこんなに多かったかなとびっくりするほどです。とにかく他の人から遅れないために学ぶ。学びたい気持ちや、未来の希望を叶えるために学ぶといったことよりも、「追いつけなくなったらアウト」という恐怖の方が勝っているのです。

子どもたちだけでなく、保護者も同様です。「手遅れにならないうちに、お子さんには早くから学ばせましょう」といったメッセージが世の中にあふれ、「遅れたら大変」という強迫観念を植え付けられます。親の責任として何とかしなくては、と追い込まれていくのでしょう。

もちろん、これから先の社会において、学歴だけがすべてではないと保護者も学校の先生も思っているはず。でも、世の中に対する不安感が強い今、この先どうなるかわからないからこそ、学力という数値化できる評価にこだわることになります。

つい先日話を聞いた小学校2年生の男子も、毎日学習塾へ行き、学力だけでは不安だからとさらにピアノ、書道、プールに通い、土日も含めて週1回しか友だちと遊べないと言っていました。その子だけではありません。子ども同士で遊ぶ時間がない子が増えています。

みんながみんな初めから、こんな風に「勉強も習い事もよくできる子」を目指していたわけではなく、気づいたらそうなっていたということも多いのではないでしょうか。
働いている保護者で子どもの預け先がなくて塾へ通わせたり、周りの子どもたちが習い事をしているから合わせようとしたり。半分望んで半分望まない形で、だんだんに子どもらしく過ごす時間が削られていくというのが現状です。

「根拠のない自信」が、不安な社会情勢の中で生きていく特効薬になる

では、この不安の多い社会を生き抜いていく子どもを、どう育てたらいいか。非常に難しい問題ですが、私が取材の中で繰り返し聞いた中では「根拠のない自信」という言葉が解決のヒントとなりそうです。

「学校外の育ちと学びの場」をめざして子どもたちの居場所を作ってきた、フリースペースたまりばの西野博之さんは、「『うちの子は大丈夫だ』と、根拠なく親が腹をくくることがとても大事」と言っています。

大人には、子どもよりも長く生きてきた分、将来を見抜く力がある、と思われているかもしれませんが、ほんとうはそんな力はないですよね。東日本大震災があり、パンデミックがあり、IT化が進み、先のことは誰にもわからない世の中。みんな迷いながら日々を生きて、なんとかやってきたというだけです。誰も、将来について根拠のある自信なんて持てないはずなんです。

だからこそ、「この子は大丈夫」と思っていることが大事になります。子どもが不安になった時や、いじめが起きて苦しい時に、自分のことを「大丈夫」と信じてくれている大人には悩みを相談できるはずです。根拠はなくても「我が子は大丈夫。私が守れば大丈夫」と保護者は思っていたら、それでいいのです。

成功した人たちの多くが、この「根拠のない自信」をもっています。ライムスターの宇多丸さんは、自分の作品をスタートさせるときに「根拠はないけど自信があった。できる気がした」と語っていました。漫画家の山田玲司さんは、親に「大丈夫、大丈夫」といって育てられたと言っていました。「根拠のない自信」によって、自分の世界を作ることができた人たちです。

一方で、根拠なく不安に包まれる人もいます。根拠のない自信を持つ人との違いは、親がどういう言葉がけをしてきたかによってあらわれます。親だって、子どもが「大丈夫」かどうかについては、ほんとうは根拠なんてないはずなんです。それでも、「この子は大丈夫」と思い、その思いを折に触れて子どもに伝えることによって、子どもは「根拠はないけれどできるような気がする」という自信が醸成されていきます。

子どもが生きていくための特効薬「根拠のない自信」を作り出すのは、保護者にしかできないこと。自分のことをよく知っている人に「大丈夫」と言われるからこそ、自信になるのです。

社会が不安になっているから、いじめの低年齢化が起きていると知ってほしい

去年と今年、入学のタイミングでコロナ自粛になったために、学校になじめなくて不登校という子は増えています。正式な統計は今年の10月に出るはずですが、体感として「学校に行きたくない」と言っている子が明らかに増えているし、フリースクールへの相談も1.5倍ほどに激増しています。

今、大人たちが感じている閉塞感、先行きが見えない感じは、そのまま子どもたちにも伝わっています。コロナ自粛になる前までは、ギリギリセーフの綱渡り状態だったものが、ダメになってしまう。「あとちょっとがんばれば」の「あとちょっと」が頑張れなくなる状況で、不登校になってしまう子どもがたくさんいる、ということです。

この新型コロナウイルスは、心への影響が大きいです。子どもたちはみんな「コロナだからしょうがない」と言います。友だちと会えないのがつらい、部活がなくなって気力がわかない、聞けば子どもはそう答えますが、みんなコロナのせいだからと、心の中にストレスをためこんでいます。

いじめの低年齢化や不登校が増えたことは、コロナによって急激に始まったのではなく、そもそも子どもに無理をさせて競争させ、不安をあおる教育をしてきた結果ではないでしょうか。ここからの10年で、子どもが安心して子ども時代を生きられるようにすることが、弱い世界にしないために必要なことだと、私は考えています。

まとめ & 実践 TIPS

不安な社会情勢だからこそ、目に見える勉強の成績という形で不安を解消させようとするあまり、子ども時代に大切な時間の過ごし方ができなくなっているという状況が、子どものストレスを生み、いじめや不登校を引き起こしているのかもしれません。その不安の特効薬は「根拠のない自信」をつけること。大人は子どもに「あなたは大丈夫」というメッセージを伝えていくことが大切だと、石井さんは話してくれました。

プロフィール

石井志昂

石井志昂

『不登校新聞』編集長。1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」に入会。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。現在までに不登校や引きこもりの当事者、親、識者など、400名以上の取材を行っている。

この記事はいかがでしたか?

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A