一生、学び続ける社会へ 社会人も大学やオンラインで

グローバル化をはじめとした時代の大きなうねりの中で、学校の在り方にも大きな変化が迫られています。もはや子ども・青年時代に学校で学んだ知識が、一生通用する時代ではありません。「生涯学習」というと、日本では退職後に趣味で学ぶようなイメージが強くなってしまいましたが、本来は、社会に出てからも仕事に必要な知識などを、必要な時に学べるような社会を目指すものです。そして今こそ、生涯学習環境の整備が本格的に求められる時代になってきたようです。

政府の教育再生実行会議が今年3月に発表した第6次提言(外部のPDFにリンク)のタイトルは、「『学び続ける』社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について」でした。そこでは、▽米国の仕事のうち47%は、今後10~20 年程度で自動化される可能性が高い ▽2011(平成23)年に米国の小学校に入学した子どもたちの65%が大学を卒業する時には、今は存在していない職業に就く……という海外の研究を紹介し、こうした問題提起が日本にも無縁ではないと指摘されています。これらのデータは同会議だけでなく、中央教育審議会の「高大接続改革」答申(外部のPDFにリンク)をはじめ、文部科学省関係の各種資料でも、最近よく引用されているものです。つまり、将来に対するそうした危機意識が、近年の教育改革を突き動かしているということもできるでしょう。
その一環として期待されているのが、第6次提言にもあるとおり、大学などを若者だけでなく社会人など、「全世代のための学びの場」へと転換することです。知識基盤社会といわれる現代に対応するには、高等教育の役割が欠かせません。そして、その知識を一生更新し続けなければならないとしたら、いつでも高等教育にアクセスできるようにすることがますます必要になるのです。

とはいえ、働きながら大学に通うのは容易なことではありません。そのための環境整備が不可欠なのはもちろんですが、その一方で、進展するICT(情報通信技術)環境を活用して、高等教育レベルの高度な知識を、しかも国境を越えて提供しようという動きが起こっています。それが「MOOC(ムーク=大規模公開オンライン講座)」であり、その日本版である「JMOOC(ジェイムーク)」です。
これらは国内外の<大学発>の事例ですが、多様な学習機会の提供主体は、大学関係機関にとどまりません。たとえば、米国の企業が提供する「Udemy(ユーデミー)」は、ビジネスや資格からダイエット、趣味、学校の勉強まで、教えたい人と学びたい人をつなぐ世界最大規模のオンライン教育プラットフォームで、700万人もの人が学んでいるといいます。英語が中心でしたが、このほどベネッセコーポレーションが同社と業務提携を行い、日本版サービスの提供を始めました。

いつでも、どこでも、誰でも学べるようにするのが、生涯学習社会の理念です。学校教育も、そうした生涯学習の基礎を培うものです。学校での学びも生涯学習社会を見据えたものとすることが、今後とも求められているのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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