一生学び続け、社会で活用を e-ラーニングや大学の「学び直し」も‐渡辺敦司‐
学校時代はもとより、社会に出てからも、必要な時に必要なことを学べる「生涯学習社会」に向けた環境整備が本格的に求められるようになってきたことは、以前の記事で紹介しました。また、中央教育審議会の部会は『「学び」と「活動」の循環』を目指して、ICT(情報通信技術)を活用した「生涯学習プラットフォーム(仮称)」を構築するよう提言しています。大学の公開講座や資格検定試験、e-ラーニングなどの学びを、具体的な地域の課題などに活用し、そうした学習や活動の成果が評価され、大学での学び直しや、企業でのキャリアアップにつながっていく……。そんな社会の実現に向けて、いよいよ動き出しているようです。
同部会の「中間まとめ」では、e-ラーニングを含め、民間や大学が多種多様な学習機会を提供していることを強調しています。以前の記事でも、高度な大学教育の学習機会を提供する「MOOC」(ムーク=大規模公開オンライン講座)はもとより、ビジネス資格から趣味、学校の勉強まで、教えたい人と学びたい人をつなぐ世界最大規模のオンライン教育プラットフォーム「Udemy」(ユーデミー)などが急速に普及していることも紹介したところです。中間まとめでは、そうしたe-ラーニングが、家庭でタブレット端末を使用したり、移動中にスマートフォン(スマホ)を利用したりするなど、学習スタイルの劇的な変化をもたらしていることに着目しています。
「生涯学習体系への移行」は、中曽根康弘内閣の下に設置された臨時教育審議会(1984・87<昭和59・62>年)の答申から30年来の課題ですが、学習成果の活用という面では、いまだ十分な実現が図られているとは言えません。学習履歴を蓄積する「生涯学習パスポート」などの取り組みを進める自治体も増えてきつつありますが、中間まとめは、その正確性や信頼性に課題があると指摘します。そこで登場するのが、生涯学習プラットフォームの構築です。
生涯学習プラットフォームによって、
(1) 大学・地方自治体・民間事業者等が主体的に参画することで、相互の連携が推進され、学習プログラムが体系的に再構築され、取り組みの質が向上する
(2) 学習機会の提供者や検定試験実施団体の協力により、信頼性のある学習履歴の記録・証明が可能になる
(3) 自由に記載できる部分も設けることで、信頼性と自由度のバランスが取れたものとして運用できる
といいます。
それにより、一人ひとりの学習と、地域課題とを橋渡しすることにより、学習者と「学び」の場をマッチングさせることを目指しています。就業や大学入学者選抜での活用についても、同部会で今後、引き続き検討していくことにしています。
第3次安倍改造内閣は、「一億総活躍社会」を、政府の新たな最重要課題として掲げています。一人ひとりが本当に活躍できる社会を実現するためにも、生涯学習プラットフォームに期待したいものです。