教育へのタブレット導入で、学びを通じて人と人とがつながる社会へ
学校や学習塾などで、タブレット端末をはじめとした情報通信機器(ICT)を導入する動きが徐々に広がりつつある。そこには、「教育のICT化が、人と人とのつながりを豊かにする」という考えがあるという。教育のICT化がもたらす効果について、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に話を聞いた。
学校は「教育の情報化」を進めようとしています。対面授業をICTを用いたものに替えてしまうのが目的ではなく、一斉授業や個別学習はもとより、ICT機器を手にした子どもたち同士が教え合ったり学び合ったりする「協働学習」を促進することで、教室に「学びのイノベーション(革新)」を起こすことがねらいです。
一方、家庭学習でも、ベネッセコーポレーションの通信講座「進研ゼミ」が2014年4月から、オリジナルの学習用タブレットの配布を始めます。この件に関する記者発表で福島保ベネッセホールディングス社長が、「デジタルだからこそ人が関わり、人に寄り添える教育サービスを作りたい。これまでの『赤ペン先生』同様、人によるサポートを大事にする」と説明していたのが印象的でした。
成島由美・同社家庭学習事業本部長は「このタブレットで学習した子どもたちが、学校の授業でも積極的に発言し、友達と学びを深められるようにすることも意識しています」と語りました。
大学教育における、世界的な大規模オンライン講座「MOOC(ムーク)」も、ただインターネットで流される講義を聞くだけではありません。難解な疑問でも大概は受講者同士のチャットによって、解決してしまうといいます。つまりMOOCは、何万人もの世界中の学友と共に学ぶ機会を提供するものでもあるのです。
ICT機器は、学びを深めるだけでなく、時空を超えて人と人とのつながりを広げる可能性を秘めています。教育のICT化を進めることは、社会に出てからもICT機器を使って人と人とが広く、深くつながる仕事をするための力を培うことに直結しているのです。