「デジタル教科書」導入には個人所有の端末も活用!?

文部科学省が「デジタル教科書」導入の本格的な検討を始めたこと、しかし課題は山積していることを、以前の記事で紹介しました。とりわけ保護者にとって関心があるのは、導入されるのはよいけれど、それに伴ってどれだけの費用負担が増えるのか、ということではないでしょうか。デジタル教科書の導入を求めてきた民間団体「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)が先頃開催したシンポジウム「スマート教育の実現に向けて~DiTTビジョン発表~」でも、端末をどう整備するかが議論になりました。

シンポジウムには、関係省庁の担当者や、文科省有識者会議の委員を務める新井健一・ベネッセ教育総合研究所理事長らが登壇しました。この中で、総務省のICT(情報通信技術)政策を担当する南俊行・政策統括官(情報通信担当)が、「BYOD(私的デバイス活用)を真剣に検討していきたい」との考えを示したことが注目されます。
BYOD(Bring Your Own Device)とは、自分の端末を持ち込んで活用するということで、会社であれば、私用パソコンで仕事ができるようにすることです。社会全体で情報化をいち早く進めている韓国の学校では、紙情報のデジタル化が基本ながら、BYOD方式でデジタル教科書を導入しています。

本来なら一部の先行例のように、学校側が児童生徒1人に1台の端末を用意し、そこにデジタル教科書のコンテンツ(内容)をインストールすることが理想です。しかし、公立学校に限って見ると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数(2014<平成26>年3月現在[外部のPDFにリンク])は、全国平均で6.5人。タブレット(多機能携帯端末)型コンピューターは全国で7万台以上と、1年で倍増しているものの、1人1台という環境は遠い先の話です。そもそも政府が閣議決定した「第2期教育振興基本計画(外部のPDFにリンク)」では、計画期間内の2017(平成29)年度までに整備する目標を。1台当たり3.6人としています。それも、公立学校で機器を整備する費用は使い道が限定されない、地方交付税で措置されているため、その自治体の判断によっては、ほかの予算に振り向けられてしまう可能性さえあります。

この日のシンポジウムでは、「教育情報化推進法」の制定を求める、DiTTの新しい政策提言も発表されました。そこでは、DiTTが2010(平成22)年の設立当初から掲げている「1人1台の情報端末、教室無線LAN、全教科のデジタル教科書」という3つの目標をいよいよ実現させることを目指しています。そうでもしなければ、情報端末はいつまでたっても「デジタルランドセル」(提言)にならない、というわけです。

新井理事長はシンポジウムで、デジタル教科書の導入には「ネットワーク、コンテンツ、デバイスの問題を、コスト配分も含めて包括的に考えなければならない。デバイスのコストも下げることを考える必要がある」と指摘していました。デジタル教科書がアクティブ・ラーニング(AL)を含めた学習の高度化に有効である以上、自治体や学校、家庭、企業などの関係者が、英知を集めて検討すべき課題になっているといえるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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