HRや生徒会・行事でこそ「アクティブ・ラーニング」

次期学習指導要領の目玉として注目されている「アクティブ・ラーニング」(課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習、AL)。高大接続改革の一環として、大学入試を「多面的な選抜」に変えるよう提言されたことから、学校関係者はもとより、受験関係者からも熱い視線が向けられています。ただ、ALは教科だけに求められているわけではありません。もともとアクティブな活動が行われていた「総合的な学習の時間」はもとより、学級・ホームルーム(HR)活動や児童・生徒会、学校行事といった「特別活動」(特活)とも、ALは大いに関係してくるようです。

次の指導要領で、各教科などを「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学習意欲」という共通の観点(学力の3要素)で明確にした「構造化」を行い、それを「総合的な学習の時間」や特別活動を通じて「汎用的能力」にまで高めようと検討していることは、先の記事で紹介しました。「総合」はともかく、なぜ特活で? と思ったかたもいたのではないでしょうか。

しかし、指導要領の改訂方針を検討している中央教育審議会の特別部会で示された素案では、高校の特別活動の在り方について、「特別活動を通じた、望ましい学級集団の形成が、教育課程全体における『主体的・協働的な学び(アクティブ・ラーニング)』を推進する基礎をつくるものであること」を強調すべきだという考えを示したうえで、各教科で学んだことを、HR活動や生徒会活動、学校行事を通じて、自分自身や学級の実生活に直結させることを提案しています。
HRはもとより文化祭・体育祭などの行事が、人間形成上も重要な意義を持っていることは、多くのかたが高校時代に体感してきたことでしょう。指導要領(外部のPDFにリンク)上も特活は、集団活動を通じて「よりよい生活や人間関係を築こうとする自主的、実践的な態度」を育てることなどを目標に掲げています。

一方、ALでは、仲間と討論したり発表したりすることによって、一人で取り組む以上に、考えや学びがより深まるとされています。そうした学習活動を行うには、クラスの人間関係が良好であればあるほどスムーズに進むことでしょう。逆に、ALのような活動が、クラスの人間関係を良好にするという効果も期待されます。これまでも各教科等の学習と特活は密接な関係がある、と学校関係者は捉えていましたが、ALの促進によって、その重要性はますます高まると言ってよいでしょう。

昨年12月の中教審答申は、「学力の3要素」のうちの「学習意欲」を、高校・大学では「主体性・多様性・協働性」に置き換えています。こうした主体性・多様性・協働性を育むにも、特活にますます期待が高まりそうです。

ただ、高校はこうした活動を、従来の「伝統」に任せていればよいという姿勢ではいけないでしょう。特活で具体的にどのような資質・能力を育成しようとするのか、各教科等とどのような関連を図るのかを明確化することが、次の指導要領の下では求められます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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