東大入試は難しい? 実は、教科書レベルの理解をもとに思考力を問う【良問】が多い東大の問題

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ここ数年、テレビ番組名に「東大」が入るクイズ番組や、「東大」がタイトルに入る書籍や雑誌記事など、受験生以外にも東京大学の話題が多くみられるようになりました。大学入試では最難関とされる東京大学ですが、いったいどのような入試問題が出題されているのでしょうか。

この記事のポイント

「伝説の1問」といわれる東大の問題

「東京大学(以下、東大)」というと、昭和のころは「勉強一辺倒で近寄りがたい」というようなイメージが持たれがちでした。しかし最近では、テレビ番組名に「東大」が入るクイズ番組で現役東大生がクローズアップされたり、子育てに関する書籍や雑誌の見出しに「東大」が入っていたり、「東大」受験に関するマンガやドラマがあったりと、以前に比べると「東大」を身近に感じるようになりました。

一方、「東大」の入試問題があまり話題になることはありませんが、「伝説の1問」とよばれるような次の問題で話題となったことがあります。

  • 【数学】円周率が3.05より大きいことの証明(2003年度)
  • 【数学】三角関数の加法定理の証明(1999年度)
  • 【日本史】過去の東大入試で点数が低かった答案例で再出題(1983年度)

「円周率が3.05より大きい」証明問題は、ちょうど学習指導要領の改訂で「円周率は3で教える」と騒がれていた時期とも重なったことから、「ゆとり教育への批判ではないか?」と各種メディアを中心に話題となりました。また多くの受験生が覚えることで精いっぱいな加法定理の公式を、東大ではその公式の証明問題を出題したことから、「公式丸暗記への警鐘か?」として教育関係者の間で話題になりました。さらに東大日本史では、過去の東大入試で点数が低かった問題の答案例を示しつつ、同じテーマで再び問う問題もありました。「入試問題には大学(学校)からのメッセージが込められている」ともいわれますが、東大が意図したかどうかはわからないものの、一石を投じた「伝説の1問」でした。

「知識の詰め込み」でなく、「教科書レベルの本質」を問う

東大の「伝説の1問」はメディアからも注目されましたが、そもそも東大の入試ではどのような問題が出されているのでしょうか。

筆者のような大学入試向けの教材を企画・制作をするところでは、毎年のようにいろいろな大学の入試問題を分析します。そうした分析のなかで、高校の先生方から「東大の問題は【良問】だ」とよくお聞きします。入試問題の【良問】というと、「どの料理がおいしいか」と同じように、基準は人によって異なりがちですが、それでも東大の問題が【良問】にあげられる背景には、次のような東大の出題方針があるためとも考えられます。

  • 高等学校での学習内容を逸脱しない
  • 文系・理系にとらわれない幅広い学習
  • 知識の詰め込みでなく、知識を関連づけて解を導く能力の高さ

これは東大が「どのような人材を求めているか?」を示すアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)として公開しているものです。
つまり東大の問題は「教科書レベルの理解をもとに、思考力を問う問題を出す」と明言しています。高校の教科書や授業で扱われないような難問・奇問ではなく、あくまでも「教科書レベルの理解をもとに、思考力を問う問題を出す」という方針が、多くの人の【良問】の基準をクリアしているのだと思われます。

現役東大生が語る、東大の問題対策は?

とはいえ最難関の東大の問題が「本当に教科書レベルの理解で解けるのか?」という疑問が出てくると思います。かくいう筆者も東大の問題を分析しはじめた頃は「教科書レベルだけで対策するのは難しいのでは?」と思っていました。そこで現役東大生へのヒアリングや、「東京大学新聞」の「受験生特集号」にある現役東大生のコメントを分析するなかで、東大の問題対策として次のような共通点が浮かび上がってきました。

  • 教科書を何度も読む
  • 学校の授業や定期テストは手を抜かない
  • 過去問はできるだけ多く解く

「東京大学新聞」は毎年秋に刊行する「受験生特集号」のなかで、現役東大生による受験当日に向けたアドバイスや、教科別の受験対策を掲載しています。「東京大学新聞」の現役東大生のコメントのなかには「過去問は10年分以上取り組んだ」など、なかなかハードなものもありますが、そのように過去問をやり込んだ現役東大生らの問題対策のキーワードが「教科書」「基礎・基本の徹底」でした。

筆者自身も東大の問題を分析するにあたり、東大の問題と複数の教科書を照らし合わせながら確認していくと、確かに複数の教科書で触れている本質的な内容が問われていることがわかり、東大の問題が【良問】といわれる理由がわかるようになってきました。

なお「東京大学新聞」の「受験生特集号」には、「東大教員からのメッセージ」という現役の東大教員が問題の出題意図や「受験教科を学習する意味」を語るコーナーがあります。一線の研究者が語る「受験教科を学習する意味」は読みごたえのあるものですので、興味のある方は取り寄せてみてはいかがでしょうか。

歴史好きは「答えと解き方」からも学べる東大の問題

東大に「教科書レベルの理解を問う【良問】が多い」といわれても、東大の問題が解けるようになるためには、「教科書レベル」の確実な理解とそれを活用できる思考力が求められます。

そこで東大の問題が解けなくても【良問】を知りたいという方には、「答えを先にみる」方法をおすすめします。予備校各社などが公表している解答例と解き方を読みつつ、教科書の該当部分を照らし合わしていくことで、新たな発見があるかと思います。こうした解答例と解き方、教科書との照らし合わせは、特に東大日本史や東大世界史などの歴史科目がおすすめです。

最近では「大人の学びなおし」もさかんですが、東大日本史・東大世界史をテーマとする一般書も多く刊行されている背景には、東大世界史や東大日本史の問題が大人の教養を深める素材として有用であるからだと考えます。歴史が好きなお子さまには、東大の歴史問題をきっかけに興味関心を広げてみてはいかがでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

東大の問題には話題となる「伝説の1問」もありますが、「教科書レベルの理解をもとに、思考力を問う【良問】」が多くあります。問題の答えと教科書を照らし合わせながら確認することで、教科の本質的な学びを深めるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

株式会社プランディット 社会課 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの社会(地歴公民)の教材編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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