SSH生徒研究発表会開催、秋田県立大館鳳鳴高校が最優秀賞

文部科学省は2005年8月9、10日の2日間、東京ビッグサイトにて「スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会」を行ないました。この発表会は04年度に続き2回目で、03年度から認定を受け、2期目を迎えた高校が中心となり、65校のべ850人が参加しました。そこで今回は発表会の様子をお届けしながら、スーパーサイエンスハイスクールの意義や今後の課題について、改めて考えてみたいと思います。

理科離れを止め、豊かな人材を育てるために

文部科学省では、科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を「スーパーサイエンスハイスクール(以下SSH)」として指定し、理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発などを2002年度から行なっています。4年目を迎えた今年度は、82校がSSH対象校として指定されています(04年度より10校増)。

SSHが始まった背景のひとつには、生徒の「理科離れ」があげられます。80年代以降、初等中等教育の段階で理科の授業時間が削減され、実験や観察に十分な時間を割けなくなりました(グラフ1参照)。その結果、発見や探究といった理科の面白さを感じる機会も減り、「理科嫌い」の生徒が増加した要員のひとつと考えられます。

グラフ1 中学校の授業時間数の変化(3年間)

「出典 ベネッセ 情報本部まとめ(2002年)」

実際、国際的な学力調査の結果を見ても、日本の生徒の算数・数学、理科の学力は上位にあるものの、「数学や理科が好き」「将来理数系に関する職業に就きたい」と思う人の割合が他の国と比較して非常に低いことが明らかになっています(表1、2参照)。

表1 「理科の勉強は楽しい」か

IEA(国際教育到達度評価学会)実施 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)2003年調査結果より

表2 「数学の勉強への動機付け」

OECD(経済協力開発機構)実施 生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査結果より

そこで文部科学省は、科学好き、理科好きな生徒を増やすための総合的な対策「科学技術・理科大好きプラン」を02年に打ち出しました。SSHはその一環として位置づけられ、05年度は13億円の予算が設けられています。

求められるのは研究内容+コミュニケーション力

今回の発表会のメインは、SSHに指定されてから3年目を迎えた26校が行なうプレゼンテーションでした。研究領域別に4つの分科会に分かれて、各校が15分間のプレゼンテーションと質疑応答を行ないました。それらの内容を審査、点数化した結果、優秀な成績を収めた4校が表彰されました。

【審査の観点】
研究テーマの着眼点
研究内容の独自性
研究成果の発展性
熱意やモチベーション
プレゼンテーションの方法や態度

【入賞校】


大館鳳鳴高校をはじめとする受賞校の共通点は、研究レベルの高さや緻密さはもちろんのこと、その成果を他の人に伝えようとする熱意やプレゼンテーション力に長けていたことです。将来、国際学会などグローバルな場で活躍するには「自分の意見を表現し、周囲の理解を得る」といったコミュニケーション力が必須です。諸外国と比較して日本人が不得手とされる能力のひとつでもあるため、その重要性が改めて強調されたようでした。


文部科学大臣奨励賞を受賞した秋田県立大館鳳鳴高校のプレゼンテーションの様子。
会場からの質問にも、わかりやすい言葉でよどみなく回答していた。


昨年(前回)と比較した場合の全体的な印象について、SSHの活動を支援している独立行政法人科学技術振興機構(JST)の長谷川 奈治課長は「発表の内容が総じてレベルアップしたようです。初開催だった昨年と異なり、今年は前回の様子を参考にしながら、発表会に向けて準備すべきポイントや計画の見通しを立てることができたからでしょう」と説明します。

またこれ以外にも、
(1)身近な素材・題材をとり上げる学校の増加
(2)先輩の研究を後輩が受け継いで研究を深める学校の増加
(3)活発な質疑応答時間
(4)女子生徒の増加
などの傾向が見られました。

SSHは第2フェーズ〜教育界全体への波及効果が今後の課題

今回参加した生徒にとって、発表会はゴールではありません。むしろ、SSHの経験を礎にどのような道を歩み、伸ばしていくのか、という中長期的な視点こそ重要です。同様の観点から、今年で4年目を迎え第2フェーズに入ったとされるSSHプログラムは今後どのような役割が期待されるのでしょうか?

すでに、「生徒と教師双方のモチベーションが向上し、視野が広がった」(富山県立富山高校)、「教師自身の教科指導力や専門性が向上した」(愛知県立一宮高校)といった成果が報告されています(*)。また、高大連携への取り組みについても、流星が月に衝突して光を発した瞬間の観測に世界で初めて成功する(愛知県立一宮高校)など、大学や外部機関との連携によってハイレベルの研究を実現した学校も見られ、一定の成果は出ているようです。

一方、SSH事業の評価の観点や評価手法はまだ定まっていないのが実情です。文理の別なくより多くの生徒に関わらせるべきか、あるいは特定の生徒に対して集中的に取り組ませた方が良いのか等、各校の方針もさまざまです。 いずれにせよ、中長期的な成果を検証する観点から、大学進学以降の追跡調査の実施を検討しているようです。

* SSH指定校の取り組みについての事例は「VIEW21高校版 特別号 『SSHがもたらしたもの』」をご参照ください。

また、大学入試においてSSHでの経験を大学入学後の学習につなげるAO(アドミッションオフィス)入試を導入する動きも模索されていますが、その試みは始まったばかりです。06年度から新課程入試がスタートします。今後は課題をみつけ、課題解決の手順をみずから導く論理的思考力や、読解力や論述力がより求められる問題も増えてくるでしょう。こうした学力は、まさにSSHで養われる能力と多くの部分で重なっているのではないでしょうか。

「少子化時代を迎え、どの大学も将来有望な人材を少しでも多く獲得したいと思っています。SSHはそんな大学のニーズと高校を結ぶ貴重なパイプ役。SSHの研究活動によって、そのパイプをさらに強化することが可能となります」(JSTの堀尾 拓也業務係長)

文部科学省は、05年度よりSSHの指定期間をこれまでの3年から5年に延長しました。そして、より効果的な大学等との連携接続や国際的な科学英語の能力をどのように育成するかなどを今後の課題としています。「SSH事業開始から4年目を迎え、指定校同士の交流や、大学と各都道府県教育委員会の関係構築など新たなネットワークが生まれてきました。これらを活かして、課題や成功事例を共有する仕組みを整えていく予定です」(長谷川課長)

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