市区町村は子育て・少子化最優先、学校教育は……4番目!?

統一地方選から1か月がたち、新しい首長の下で新機軸を打ち出そうという自治体も少なくないでしょう。とりわけ市区町村は、その行政課題が住民の暮らしに直結しているとともに、首長の意向次第では思い切った施策が展開できるという特色があります。国の規制を控えて地方自治を強化していこうというのも近年の流れで、人口が減少するなか、住民を増やすために独自の施策を競い合う傾向も出てきています。ベネッセ教育総合研究所が行った「明日の子育て・教育を考える」調査からは、限られた予算の中でも首長が積極的に施策を引っ張っていこうという意気込みが見て取れます。

調査は2015(平成27)年1月、全国すべての自治体(1,741市区町村)を対象に実施し、半数近く(826市区町村)から回答を得ました。回答者の4人に1人が首長本人でした。災害対策や土木・建築分野などのさまざまな課題の中で、自治体全体の重点施策は何かを3つまで選んでもらったところ、抜きんでて多かったのが「子育て・少子化対策分野」の79.3%でした。自治体の半数が将来的に「消滅」する可能性があるという民間研究団体の指摘(外部のPDFにリンク)もあるなか、自治体側の危機感も相当なようです。

これに対して、「学校教育分野」は25.7%で、観光・商業分野(42.3%)、農林・水産分野(34.4%)に次ぐ4番目で、高齢者福祉分野(25.2%)が5番目でした。これは優先順位が低いというより、小・中学校の設置が義務付けられている一方、教員給与は国と都道府県の負担だったり、教材費も地方交付税で措置されていたりと、一定水準の教育を確保する基盤的な整備が行われているため、自治体独自の施策は「プラスアルファ」と受け止められている実態があるものと見られます。

そうしたなかで法律改正により、この4月から首長と教育委員会による「総合教育会議」が設置されるなど、教育行政に首長の意向をより反映させやすくする仕組みも始まりました。調査では、3分の2の自治体で首長が強いリーダーシップを発揮したい意向が示され、従来の教育委員長の職務も兼ねることになった新「教育長」にも、8割でそうした首長の意向に沿った人を任命したいとしています。ただ、自治体の6割が教育長には元校長・園長や教委の管理職経験者を充てたいとしており、「従来通り教育委員会の意向を尊重するつもりだ」との回答も6割を占めていますから、やはり専門的な事項は引き続き専門家に任せたいということのようです。

子育て・教育施策の課題(いくつでも)としては「予算が不足している」(71.9%)が他を引き離しています。税収を上げる人口増加には子育て・教育施策が不可欠なのに、現下の税収不足で思い切った施策が打てない……というジレンマもあるようです。

地方創生」が政府の最重要政策の一つと位置付けられるなか、子育て・教育施策をどう充実させるかは地方自治体の大きな課題です。保護者にとっても身近であるだけに、決して受け身ではいられません。住民としてどう意向を反映させるかが試金石と言っても過言ではないでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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