「学校パソコン格差」、都道府県より市区町村が深刻

文部科学省が毎年公表している「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の2015(平成27)年度結果では、全国の市区町村の公立学校におけるパソコンの整備状況などを、1位から最下位まで順位付けして公表していることが注目されます。このままでは情報化教育などに対する自治体格差が拡大しかねないという、文科省の強い危機感がうかがえます。

パソコン1台に0.3人から24人まで

政府の第2期教育振興基本計画では、2017(平成29)年度までに、公立学校の児童生徒3.6人に教育用コンピューター1台を整備することになっています。
調査結果によると、2016(平成28)年3月末現在で、コンピューター1台当たりの児童生徒数は平均6.2人(前年度6.4人)となっており、目標達成は困難な状況であることが明らかになりました。さらに問題なのは、教育用コンピューターなどの整備状況に大きな自治体格差があることです。たとえば、都道府県トップの佐賀県は1台当たり児童生徒2.2人なのに対して、最低の埼玉・神奈川の両県は1台当たり8.2人となっており、約3.7倍の開きがあります。

しかし、都道府県格差だけが問題ではありません。公立小中学校を直接所管しているのは、市区町村だからです。これまで文科省は、都道府県別に市区町村ごとの詳しい整備状況を公表していましたが、今回初めて、全国すべての市区町村の整備状況を順位付けて、ホームページで公開しました。

それによると、教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、最高が0.3人、最低が23.7人で、両者の間には79倍もの開きがありました。ただし上位4自治体は、福島県双葉町など東京電力福島第一原子力発電所の周辺自治体が占めており、原発事故に伴う児童生徒数の減少が大きく影響しているようです。

同一都道府県内でも格差が大きいことが、市区町村別整備状況の特徴です。たとえば東京都23区では、荒川区の1台当たり児童生徒1.2人に対して、大田区と練馬区は14.7人と約12倍の差があります。

この他、インターネット接続のための普通教室の校内LANの整備率は平均87.7%、都道府県別では最高が徳島県の97.9%、最低は青森県の61.4%でした。ところが市区町村別では、最高が100%、最低が0%となっています。いかに教育の情報化について、市区町村間の格差が大きいかがうかがえます。

予算確保に向けて「圧力」

文科省は「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」(2014~17<平成26~29>年度)を策定し、総額6,712億円の財源を措置しています。しかし、地方自治体が自由に使える地方交付税の中に計上されているため、実際には学校に予算が回らないことが、自治体格差の出る大きな理由の一つです。

次期学習指導要領では、小学校でプログラミング教育が必修化されるなど、ICTの活用はこれからの学校教育の大きな課題です。にもかかわらず、市区町村の間で情報化に対する格差が広がれば、子どもたちの情報活用能力の育成などにも影響が及びかねません。ホームページでの市区町村別順位の公開には、学校の情報化整備のため予算を確保するよう市区町村を促そうという文科省の狙いがあるようです。

※平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1376689.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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