「全ての学校」がコミュニティ・スクールになる!?

地域住民や保護者の意見を反映させながら学校運営を行う「コミュニティ・スクール」(学校運営協議会制度)について、文部科学省の協力者会議が、学校を核とした地域づくりの観点から推進策を検討していたことは、昨年の記事で紹介したところです。このほど、その最終的な報告書(外部のPDFにリンク)がまとまったのですが、その直前に政府の教育再生実行会議が「全ての学校」でコミュニティ・スクール化を図ることを提言したことも受けて、「学校支援地域本部」など類似の組織をコミュニティ・スクールに発展させるよう提言しました。学校が全部コミュニティ・スクールになるということが、本当にあるのでしょうか。

教育再生実行会議の第6次提言(外部のPDFにリンク)では、政府が進める「地方創生」の観点から、教育機関を核とした地域活性化を図るため、全学校がコミュニティ・スクール化に取り組むとともに、コミュニティ・スクールの仕組みを「必置」にすることも検討を進めるとしています。ただ、「全ての学校」といっても、学校には国公私立があり、協力者会議でも委員から「常識的には公立学校を指すのだろう」との解釈が出されましたが、そうした点でもあいまいな提言であることは否定できません。
もっとも教育再生実行会議は「大きな方針」を示すものとされており、制度化などの具体的な検討は別途、文科省の中央教育審議会で行われるのが通例です。今後、コミュニティ・スクールについても新たな諮問が行われる可能性があります。

全校でコミュニティ・スクール化を目指すのは、公立だけでも大変なことは確かです。中教審の答申を経て2013(平成25)年6月に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」では、コミュニティ・スクールを全公立小・中学校の1割(約3,000校)に拡大するという数値目標を立てており、14(同26)年4月現在の指定校は1,919校を数えました。ただし、ここには高校や幼稚園も入っており、計画期間の2017(平成29)年度までに目標を達成できるか微妙なところです。さらにあと9割をコミュニティ・スクール化しようとなると、相当な困難が伴います。

そこで、地域の人々が学校の教育活動を支援する「学校支援地域本部」や、「放課後子供教室」に着目しました。2014(平成26)年度には、それぞれ公立小・中学校で3,746本部、1万1,991教室で取り組まれています。これらを発展させ、地域との関係をさらに強化しながら、コミュニティ・スクール化を図ろうという考え方です。さらに、3,000校達成の先を見据えた「コミュニティ・スクール推進実行プラン」(仮称)も策定するとしています。

学校と地域の関係を深めることは、両者にとってもメリットがあります。東日本大震災では学校が主要な避難所として機能しましたし、学校支援地域本部が設置されていた学校では避難住民の自治組織や学校の再開もスムーズにできたという報告があったことは、当時の記事で紹介しました。コミュニティ・スクール制度を活用するかどうかは別にしても、「地域とともにある学校づくり」(協力者会議報告)はどの学校にも重要な課題だといえるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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