女子の理系志向、先生も保護者も意識して励ましを

受験シーズンが終わり、新学期のスタートを控えて、今後の進路に向けて希望を膨らませるお子さんも多いことでしょう。好きな分野に進み、自己実現を図れるとしたら素晴らしいことです。ただ、ついつい「男性だから」「女性だから」という無意識な思い込みから、進路を誘導してしまうことがあります。その代表例が「理系は女子に不利だ」というものです。

そんななか、経済協力開発機構(OECD)は、代表的な国際的学力調査PISA(生徒の学習到達度調査)の結果から、本当に学力や得意分野に性差があるかどうかを分析。パリ本部からの中継で日本向けに記者会見した小原ベルファリゆり就学前・学校教育課長は、さまざまな分析を加えた結果、「学力の男女差は生まれつきの性質ではない」と断言しました。
しかし、どの国にも依然として学力や学習の意識に男女差があることも事実です。たとえば、「数学的に状況を説明する」「数学的概念やプロセスを応用する」「現象を科学的に解釈する」といった問題は、男子のほうが得意でした。これだけ見ると、「ああ、やっぱり女性は理数系に向いていないんだな」と早合点してしまいがちですが、科学の知識を使って「科学的課題を見つける」問題では、むしろ男子のほうが苦戦していました。
性差が出る要因と考えられるのが、学習に対する自信です。成績上位層であっても、女子は数学に対する自信が低かったのです。また、数学に対する不安も、女子のほうが強いという結果でした。ただし統計的処理を施して、高得点層で数学に対する自信が同じだった場合の結果を比較すると、男女の得点差はほとんどなくなるといいます。

こうした結果は国際平均で見たものですが、日本の場合、女子の数学の得点はOECD平均より高くなっています。日本はむしろ学力面では男女格差が比較的小さい国であり、それだけに意識を変えれば、成績や進路はさらに変わってくる可能性を秘めています。理系に進むのは男子が多いことから、世間では「女子は理数系に向いていない」、ひいては「女子は理数系が不得意でも仕方ない」という偏見を、つい抱きがちになる傾向が、いまだに根強く残っているようです。そのため保護者はもとより、学校でも生徒と先生との何気ないやりとりや態度の中で、「男子なら数学の難しい問題も解ける」といった思い込みが反映してしまうことがあり得るといいます。ベルファリ課長は「先生や保護者が、自分が持っている男女差の偏りを意識することが大事です」と指摘していました。

近年、進学や就職で「リケジョ」(理系女子)が注目され、政府も「女性の活躍」を後押ししています。もし女のお子さんで理数系が得意だったり好きだったりした場合には、それを決して否定せず、積極的に応援してあげるような姿勢が求められるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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