奨学金で海外留学を倍増へ 企業などから寄付募集‐斎藤剛史‐

国際競争の激化、東京オリンピック・パラリンピックの開催など日本の社会はグローバル化への対応を強く迫られています。文部科学省は、海外に留学する日本人学生を2020(平成32)年までに2倍に増やすことを目標に掲げ、返済不要の奨学金を支給する留学希望者の募集、海外留学支援のための企業への寄付の募集などの具体的プログラムをスタートさせました。官民一体となった支援で海外留学を増やすことを狙っています。

現在の若者たちは、「内向き」志向が強いと批判されています。本当にそうかどうかは別として、文科省の各種調査を見ると、海外に留学する日本人学生生徒(外部のPDFにリンク)が年々減少していることは間違いないようです。このため政府は、「日本再興戦略」などの中にグローバル化対応に向けて海外留学者を2020(平成32)年までに大学生12万人(現行6万人)、高校生6万人(同3万人)へと倍増させる方針を盛り込みました。これを受けて文科省は、留学キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を今年度から展開しています。同キャンペーンの特徴は、政府や文科省だけでなく、民間企業にも参加を呼びかけた官民一体型であることです。
民間企業の役割は、留学支援に必要な奨学金などの経費を寄付金として支援することのほか、さまざまな形で協力することで、企業が海外留学経験者を求めていることを学生や社会にアピールすることが狙いのようです。

海外留学の減少は、不況による経済的負担の増加、治安など海外生活への不安などさまざまな理由がありますが、海外留学をすると就職活動の日程から外れてしまうこと、民間企業が海外留学経験をあまり評価しないことなど、就職に不利になるという懸念も大きな原因の一つです。この懸念を解消するため、現在の民間企業は積極的に留学経験者を求めていることを社会や学生に伝える役割が同キャンペーンにはあります。
初年度となる2014(平成26)年度は、「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム~」として、大学生など300人を募集。1年間以内の留学が対象で、募集分野は

(1)「自然科学系、複合・融合系人材コース」
(2)アフリカやアジアなどの「新興国コース」
(3)「世界トップレベル大学等コース」
(4)スポーツ・芸術など「多様性人材コース」

の4コース。海外大学などへの留学だけでなく、現地企業でのインターンシップ、現地でのボランティア活動なども対象となります。選考合格者には月額12万~20万円の返済不要の奨学金が支給されるほか、留学準備金として10万~20万円、大学授業料などとして上限30万円の補助金が交付されます。また、2015(平成27)年度からは長期留学(2~3年間)や高校生留学も同プログラムの対象に加える予定です。

また文科省は、同省予算による大学生の留学支援を拡大するほか、「高校生留学促進事業」として高校生の海外留学(1年間・300人、2週間以上1年未満・1,300人)も支援することにしています。
東京オリンピックに向けたグローバル化対応が進む中で、大学生や高校生の海外留学が今後、大きな関心を集めることになりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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