海外と国内の大学が連名で卒業証書 留学にもはずみ‐斎藤剛史‐

政府は2020(平成32)年までに海外の高等教育機関への留学生を現行の2倍の12万人に増やす方針を掲げ、文部科学省の留学プログラムにも応募者が殺到するなど、グローバル化の進展の中で海外留学が大きなトレンドになりつつあります。ただ長期留学の場合、単位の関係で卒業までに普通より時間がかかってしまうことが問題になっています。このため文科省は、長期留学しても4年間(学部)で卒業できる「ジョイント・ディグリー(外部のPDFにリンク)」制度を2015(平成27)年度から開始することにしました。また、これによって日本と海外の二つの大学の学位を同時に受けることができるようになります。

海外の大学で本格的に勉強しようと思えば、1~2年間程度の長期留学が必要です。しかし、卒業に必要な単位数の関係上4年間で大学を卒業できなくなることもあるため、就職に不利になったり、経済的負担が重くなったりすることを懸念して長期留学に二の足を踏む大学生も少なくないと言われています。解決策として文科省は、日本の大学と海外の大学が単位互換協定を結んで、両方の大学から学位記(卒業証書)をもらえる「ダブル・ディグリー」という制度を創設しており、既に140校以上の大学が導入しています。しかし、それぞれの大学が相手方のすべての単位を認定するわけではないため、ダブル・ディグリーでも卒業までに5年以上かかるケースもあるようです。このため文科省は、長期海外留学者を増やすため、ダブル・ディグリーよりもさらに踏み込んだ「ジョイント・ディグリー」という制度を創設することにしました。

ジョイント・ディグリーは、日本の大学と海外の大学が協定を結んで一緒に教育プログラムを作成するのが特徴です。一部科目のみの単位互換ではなく共同科目の開設という方式を取るため、一般の学生と同じ修業年限で卒業することが可能になります。また、ダブル・ディグリーでは日本の大学と海外の大学から別々に卒業証書が授与されるのに対して、ジョイント・ディグリーの場合は日本と海外の二つの大学の連名で1枚の卒業証書が授与されるのも大きな特徴です。既にジョイント・ディグリー創設のための大学設置基準改正について中央教育審議会は承認の答申を出しており、2015(平成27)年度から開始される予定です。
具体的には、大学が各学部の中にジョイント・ディグリーを希望する学生のための「国際連携学科」を設置します。卒業に必要な単位取得は、日本の大学で2分の1以上、海外の大学で4分の1以上とされ、学生の身分は日本と海外の大学の二重学籍となります。「国際連携学科」の定員は、母体となる学部の収容定員の2割以内で、設置には文科省による審査・認可が必要となります。独自の入試も想定されており、早ければ来春から入試を始める大学が出てくるでしょう。卒業大学を聞かれて、日本の大学と海外の大学の両方を名乗る若者が一般的な存在になるという日も近いかもしれません。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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