美しさの裏に隠された秘密。スペインの巨匠、建築家ガウディの知られざる魅力とは?
19世紀から20世紀にかけてスペインのバルセロナを中心に活躍した著名な建築家、アントニ・ガウディ。ガウディの作品には、サグラダ・ファミリア、カサ・ミラ、グエル公園など多くのものがあります。建築やデザインに興味のある学生は一度は聞いたことがある名前かもしれません。
ガウディは、バルセロナで建築を学びました。建築を学びながらも、歴史や経済、美学や哲学など、さまざまなことに関心を持っていたそうです。ガウディは、カトリック教徒で、とくに晩年は熱心な教徒として過ごしたといわれています。そんな背景もあり、ガウディの作品には、教会をはじめ司教館、修道院の建築も少なくありません。
サグラダ・ファミリアもその一つ。カトリック教会であるサグラダ・ファミリアは、現在も工事が進行中の未完のガウディ作品です。未完でありながら、2005年には地下聖堂と生誕のファサードがユネスコの世界遺産に登録されています。
際立つデザインの裏に、安全性のある構造
建築家として建物を設計するだけでなく、シウタデラ公園欄干(らんかん)の装飾も手がけるなど、デザインにも凝っていたようです。実際、ガウディの建築は、曲線や細部の装飾が多用され、独創的なデザインは多くの建築家たちに影響を与えました。設計は、構造学による合理性と物語性豊かな装飾で構成されています。たとえば、サグラダ・ファミリアほか、グエル教会など、ガウディの建築に多く見られるカテナリー・アーチ。その美しくシャープな形状は、実は見た目の美しさだけでなく、構造の安全性を考えて採用されているのだとか。
また、ガウディは、建築そのものだけでなく、サグラダ・ファミリアの工事現場には、現場で働く人たちのために託児所を設置。子どもをピックアップして帰宅するというこの流れは、現場で働く人にいい気を与えていたのでしょうか、現場では1882年の着工以来、事故がないそうです。
ガウディ自身は生涯独身でしたが、現場で働く人たちへの配慮も、きっと建築物の安全性に通じる思いやりや想像力の豊かさから発想されたものなのではないでしょうか。
ただ見るだけでなく、そこにある想いから学ぶ
建築物を見るのが好きという人は多いと思います。それは暮らしの場であったり、人との集いの場であったり、人が暮らしていく中で、建物は重要です。こんな家に住みたい、こんな建物で働きたいなど、理想を思い描きやすいのも建築の楽しいところではないでしょうか。でも、ただ素敵なだけでなく、建物が丈夫で安心して暮らせることも大切な要素です。とくに地震大国といわれる日本では地震に強い構造であることは建築物の基本。
デザイン性にも優れ、なおかつ構造学にも長けていたガウディだったら、今の日本にどんな建築物を建てるでしょう。
ガウディの魅力は、美しいデザインや安定した構造にありますが、最強なのは実はその二つを備え、その上にいかにして合理的に建築するかも熟知しているところにあるようです。
総合的に物事を捉えることで、新しい発見と出会えるかも知れません。