小規模校のメリット生かす道も 文科省「統廃合」手引-渡辺敦司-

少子化によって小さくなった小・中学校の規模について、文部科学省が適正配置の手引(外部のPDFにリンク)を約60年ぶりに作成しました。これについて一般には「さらなる統廃合を促すものだ」という受け止め方が強いようですが、必ずしもそうではないようです。

学校の規模をめぐっては、1957(昭和32)年に作成された「学校統合の手引」に基づき、翌58(同33)年には小・中学校とも1校当たり「12学級以上18学級以下」(小学校は各学年2~3学級、中学校は4~6学級)が「標準」と定められました。「地域の実態その他により特別の事情のあるときは、この限りでない」(学校教育法施行規則)とされていますが、市町村に地方交付税を配る際の算定基礎となるなど、長らく学校規模の目安となってきました。
しかし少子化により都市部でさえも各学年1学級(単学級)など小規模校化の問題が20年以上も前から顕在化し、この10年間に限っても小・中学校の約1割に当たる3,000校以上が統廃合されました。それでも標準規模を下回る公立学校が小学校で46%、中学校で51%と半数前後を占めています(2013<平成25>年度)。
学校の存続には、人件費も含めた運営コストがかさみます。かねて財政当局(外部のPDFにリンク)は統廃合を進めて財政削減につなげるよう文科省に迫っており、政府が閣議決定した「骨太の方針2014」でも「学校統廃合の指針について、地域の実情も踏まえつつ見直しを進める」とされていました。今回の手引作成はこれに基づくもので、背景に財政事情があったことは間違いありません。

確かに手引は、小学校で6学級以下、中学校で3学級以下の場合には「学校統合等により適正規模に近づけることの適否を速やかに検討する」ことが必要だとしています。ただし、それは複数の学年を一緒にして授業を行う「複式学級」や、近い将来そうなる可能性がある場合、教育に支障が出る心配があるためです。手引も指摘するように、一口に単学級といってもクラスの人数は10人未満から40人いっぱい近くまであり、1校当たりの児童・生徒数にすれば小学校なら40~235人程度、中学校でも15~120人程度と実態はさまざまで、機械的に判断できるものではありません。
一方で学校は、個人に勉強を教えるだけの場ではなく、「集団の中で、多様な考えに触れ、認め合い、協力し合い、切磋琢磨することを通じて思考力や表現力、判断力、問題解決能力などを育み、社会性や規範意識を身につけさせる」(手引)場です。そのためには一定の児童・生徒数が必要であり、「あくまでも児童生徒の教育条件の改善の観点を中心に据え、学校教育の目的や目標をよりよく実現するために行うべきもの」だというのが、手引の主張です。

一方で小規模校にも地域との連携やきめ細かな教育など利点はあり、手引も、存続させる場合には小中一貫教育や情報通信技術(ICT)の導入などによりメリットを最大化するとともに、デメリットを最小化するよう求めています。手引案について説明を受けた中央教育審議会の委員からも「目配りが利いている」などと評価する声が上がっていました。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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