これから先生になる人に必要なのは専門性より「覚悟」‐渡辺敦司‐

いじめ・不登校への対応、安全教育、アクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)…… 。山積する教育課題に対応して、学校の教員に求められる資質・能力も、ますます多様化しています。そうした課題を担う教員をどう育てるかを考える時、まず真っ先に思いつくのは、教員免許の取得を目指す教員養成課程で、さまざまな課題をしっかり勉強してもらうことでしょう。しかし中央教育審議会では、年内にもまとめる答申で、むしろ科目区分を大くくり化するなどして、免許取得段階ではあまり細かいことを教え込まない方針です。

国公私立を問わず、学校の教員になるには、原則として大学の教職課程で、必要な科目の単位を修得するなどして、大学を通じて都道府県教育委員会に申請し、日本全国で通用する教員免許状を授与されることが必要です。教員養成大学・学部に限らず、大学が教職課程を設置していれば、一般の学部に在籍する学生でも、免許を取得することができます。
しかし、免許の取得に必要な単位数は小・中・高校で60単位を超え(日本国憲法などを含む)、それ以外にも7日間以上の「介護等体験」が必要になるなど、かなり忙しいのが現状です。一般の学部に通う学生なら、なおさらです。そのため、中教審の答申素案(外部のPDFにリンク)では、免許取得に必要な単位数は増加させず、むしろ厳選・重点化するとし、新たな課題に対応するために、むしろ「教科に関する科目」「教職に関する科目」と細かく定めていた単位の科目区分を撤廃するといった方針を打ち出しています。

これは、「教員は学校で育つ」との考えの下、養成・採用・研修(外部のPDFにリンク)という、免許を取得してから教員になって退職するまで「学び続ける教員像」(外部のPDFにリンク)を確立する観点から、養成段階では「教員となる際に必要な最低限の基礎的・基盤的な学修」を行う段階だと位置付けるからです。いわば、新卒で教壇に立ってすぐ一人前の専門性を備えていることを求めるのではなく、「よい先生」を目指して一生努力する「覚悟」を、教員志望の学生に持たせようというわけです。
答申素案では、政府の教育再生実行会議が提言した「教師インターン制度(仮称)」の義務化は見送ったものの、「学校インターンシップ」を大学の独自科目として設けることを奨励し、教育実習の一部に充ててよいとしています。これも、教員の日常的な仕事の様子を丸ごと体験することで、学校現場の課題を大まかに把握するとともに、教員になる覚悟を固めてもらうことを目指しています。

考えてみれば、大学を出たばかりで社会経験も乏しい初任者に、オールマイティーな教員像を要求するのは、現実的ではありません。各学校の教育をよくするためには、教員全体の「チーム」に対してはさまざまな対応を求めつつも、一人ひとりの教員の成長に関しては共に見守るという姿勢が、保護者や地域住民には今後ますます求められるでしょう。


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